トヨタ自動車では、「花見の幹事」をこなせる人間は出世すると言われている。これはどういう意味なのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんによる連載「トヨタがやる仕事、やらない仕事」。第2回は「幹事という仕事の重要性」――。
咲き誇る桜
写真=iStock.com/ooyoo
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「花見の幹事をこなせば出世する」という伝説

会議の延長にあるのが社内行事です。社員旅行、駅伝、懇親会、送別会、部内の花見……。コロナ禍で開催はがくんと減りましたが、トヨタは現場がある会社ですから社内行事や飲み会が多い会社だといえます。

お花見のシーズンになると、豊田市にある本社や各工場の人たちは市内の水源公園でお花見をします。

【連載】「トヨタがやる仕事、やらない仕事」はこちら
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トヨタでは「雑事が大事」とされていて、お花見でも日ごろの業務と同じように担当者が決められます。歴代の幹事がブラッシュアップしたマニュアルを基にして、飲食の手配から場所の確保までさまざまな仕事をすることになっています。

そして「花見の幹事を完璧にこなした人間は出世する」という伝説もあります。

では、どんなことをやるのか。幹事経験者で役員に出世した人の話を紹介します。

「部長にどえらく叱られた」失敗までちゃんと書く

「花見の幹事、いきなりはできないんです。

まず、マニュアルがありますからそれを見て、今年はどこをカイゼンしようかと考える。ただし、予算は前年と変わりません。マニュアルにはチェック項目がいくつもあります。

ドレスコードはどうする? 集める会費はいくらにするか? ゴザの用意と場所取りはどうするか? それを書類にするんです。今ではパワーポイントかな。

目的は『花見を成功させる』。その後、チェックポイントを書いていく。それでも初めて幹事をやった人間は失敗します。料理を頼んだのはいいけれど、冷たい食べ物ばかりのセレクションで参加者からブーイングを食らったとか。

天気は晴れるに決まってると考えて雨具の用意をしなかったら雨が降ってきて、部長から、どえらく叱られたとか。

そんなよかったこと、悪かったことを記録して翌年に残す。花見の記録をこれほど詳細に残すのはトヨタくらいです。『部長にどえらく叱られた』とちゃんと書いておくのはとても重要です」

「SDCA」マニュアルに毎年カイゼンを重ねる

前年のマニュアルには花見のPDCA資料が載っている。初期の花見計画、当日の記録、よかったこととダメだったこと、翌年のためにカイゼンするところ。すべてを書く。

そして、一度作ったPDCA(プラン、ドゥ、チェック、アクション)の書類を来年使う時、それはSDCAのマニュアルと呼ばれます。Sとはスタンダードの略です。一度、行ったプランはスタンダードとなり、その翌年から必ずカイゼンしなくてはいけないのです」