役員であっても「アポを取れ」とは言わない
尾上さんはTPS(Toyota Production System=トヨタ生産方式)本部長ですから、普通の会社でいえば役員です。しかし、「秘書を通せ、アポイントを取れ」とは言いません。トヨタはそういう会社ではありません。
幹部は誰でも、エレベーターであれ、駐車場であれ、空港や駅へ向かう車の中であれ、どこでもミーティングをすることにやぶさかではないのでしょう。
尾上さんにも同じ質問をしたところ、「私も若いころ、よく幹部の車に同乗して車のなかで打ち合わせしました」とのこと。
進行中の仕事には、ひとことのアドバイスがすぐに欲しいという瞬間があります。そういう場合はあらためて時間をもらうより、30秒打ち合わせを駆使するといいのではないでしょうか。
しかし、短い時間の相談、打ち合わせを許してくれる幹部とそうではない人がいます。30秒打ち合わせは相手を見て行うことが必要です。そして、それを許してくれる人は権威的でもないし、保守的な人でもありません。新企画の打ち合わせなどは融通無碍で進歩的な幹部にまず相談してみるといいと思います。
トヨタの打ち合わせはアジャイル型
システムの開発にはアジャイル型とウォーターフォール型があります。そして、会議、打ち合わせ、相談もまたシステム開発にのっとり、ふたつの方式があるように思います。
アジャイル型
「『素早いシステム開発』を可能とした開発方法(agile:俊敏さ)。つくりたいシステムを大まかに決めたあとは『計画、設計、実装、テストの反復(イテレーション)』を繰り返し、一気に開発を完了させる。システムのリリース後は、ユーザやクライアントからのフィードバックをもとに、システムの改良を繰り返して行う」
ウォーターフォール型
「システムやソフトウェアの開発手法の一種。手順を一つずつ確認して、各工程に抜け漏れがないかを厳重に管理しながら進めていく。開発担当者や責任者、クライアントが各工程の成果物をともに確認し、双方の合意を得たうえで各工程を完了と見なしていく。前の工程に欠陥があると次へ進めず、次の工程に進むと後戻りできない」
(澤田純『パラコンシステント・ワールド』NTT出版)
どちらがいいとは簡単には言えないのですが、危機管理や問題の解決のような、現実が刻一刻と動く場合の会議、打ち合わせはアジャイル型がいいでしょう。その場で、その時にわかる情報の範囲内ですぐに決めるわけです。