トラブルを抱えた担当者にトップが必ずする質問

「新型コロナの感染者が増えて工場に出てくる作業者が減っている」
「部品の物流が停滞している。そこでこうした取り組みを始めました。みなさん、もっといい取り組み方はありますか」

困った問題が出てくると、出席者は活発に議論をし、解決策を考え、行動に移します。

解決策を考える前に、トップが必ず担当に聞くことがあります。

「現地を見たのか。現地へ行ってきたのか。解決策は現地で考えたのか」

コロナ禍で海外渡航がままならない時でも大事なことであれば、彼らは現地へ行きます。もしくは現地工場の様子をリアルタイムで流して討議します。

どこまでいっても現地現物というのがトヨタの解決手法なのです。しかも、かつては写真でしたが、今では動画です。

この考え方はグローバル企業であれば採用するべき手法だと思います。会議室で海外の生産工場の問題や消費者の状況をあれこれと討議するより、出張して動画で問題点を見せるほうが参加者は判断しやすいのです。口頭の報告、書類よりも、リアルタイムの現地現物を追求していくことのほうがはるかに効果的です。

プレゼンは動画入り、イラストもたっぷり使う

トヨタには自主研と呼ばれるカイゼンの発表会があります。自主研はトヨタ本体だけでなく関係会社も参加して行っているもので、内容はトヨタ生産方式を活用したカイゼンの経過、結果の発表です。

わたしは自主研を見学したことがあります。2時間ほど様子を眺めました。その時は事務技術系の発表会だったのですが、かつて見たことがあったものとは違い、進化した形になっていました。

かつての発表会ではパワーポイントを使い、それぞれのカイゼンチームの代表がひとりで説明する形でした。パワーポイントの画面にはグラフ、表、文字が配され、聞いていて面白い発表でした。まあ、どこの会社の発表会、プレゼンであっても、現在はそういった形式ではないでしょうか。

会議室でプレゼンを行う女性
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです

ところが、最近の発表会は形式がまったく変わっていました。

まず、発表はチーム全員が分担して話します。話し上手な人もいれば緊張気味で声がかすれる人、途中で沈黙してしまう人もいました。それでも、全員が自分が担当したカイゼン箇所を大勢の前で話すことになっていました。

パワーポイントも使用します。ただし、画面には文字よりもフリーイラスト素材がたっぷり使用されていました。ひと目見たら、内容がわかる画面になっていました。文字だけの画面はほぼありませんでした。