※本稿は、江村出『仕事を上手に圧縮する方法 仕事時間を1/5にして圧倒的な成果を上げたITコンサル流 仕事の基本』(日経BP)の一部を再編集したものです。
部下は育成できないもの
コロナ禍を経て、最近特に部下育成に関する悩みをよく聞きます。
「手取り足取り教えても、なかなか思うように育ってくれない」
「何回伝えても伝わらない、理解してくれない」
「答えまで言っているのに全然違うアウトプットが出てくる」
多くの人が口を揃えて、同じことを言います。それだけ部下の育成は簡単にできるものではないということです。
そこで本記事では、部下の育成について少し発想を転換することをおすすめします。
「部下を育成しよう」とするのではなく、「部下を戦力化しよう」とするのです。これはどういうことでしょうか?
ITコンサルという仕事は、半年~1年ごとにプロジェクトが変わります。その都度、新しい上司・新しい部下と人間関係を築いていくことになります。こうした状況のため、能力もスキルも性格もわからない部下を引き連れてプロジェクトに参画することになりますが、求められるのは1日1日のアウトプットです。
当然、部下の教育に専念している時間などとれるわけもありませんから、実務でひたすらノウハウを効率よくたたき込みながら、間接的に指導していくというアプローチをとることになります。
つまり、部下を現場でその都度戦力化していくことで、長い目で見たら部下が育っている、という状態をつくっているのです。
ここから、ITコンサルが現場で実践している部下の戦力化のコツをお伝します。
自分なりのアイディアを評価する
【戦力化のコツ①】1つでも新たに生み出したら評価する
部下の考える力を伸ばす一番の方法は、自分なりのアイディアを少しでも出せたときにしっかり評価することです。
アイディアといっても、誰もが驚くクリエイティブなものでなくても構いません。どんな小さなことでも、上司や周りの人がまだ気づいていない視点でプラスになることを導き出せればOKです。
それでは、評価に値する「自分なりのアイディア」とはどのようなものか、1つ例を挙げてみましょう。あなたは人事部の採用チームに配属され、採用面談の評価観点を検討することになりました。その観点は、図表1にあるように、すでにある程度、上司と別のメンバーがつくっていたとします。
この表に対して、あなたなりの視点で何か新たな案を出すことはできますか? いったん読み進めるのをやめて、考えてみてください。
一見、それなりに軸が整理されているように感じられます。しかし、突っ込む余地はまだいろいろあるでしょう。例えば、
・定性情報ばかりで定量情報がない。
・業務知識・IT知識・リード力については実際の経験の年数を確認する。
・コミュニケーション力やコラボレーション力は、顧客・上司・他チームそれぞれに対してどのようにしているかを確認する。
・ソフトスキルは、論理思考や成果物作成など具体的なトピックごとに確認する。