「クソウザ感」を覚える動画途中の広告配信

実際に10月中旬時点で広告配信に関する営業も始まっており、それも、15秒尺コマーシャルフィルムでCPM(1000回表示あたりの単価)が約6500円、30秒尺で約8200円と超強気です。

そればかりか、大手広告代理店ではデジタル広告動画の申し込みを10月14日から受付開始し、11月4日の広告つきプランにブチ込むという、リードタイムが3週間ぐらいしかないという超強行軍に打って出ることになりました。

常識的には、新規サービス、特にデジタル動画広告は、テストフライトと言われる予備期間を設けるのが普通です。というのも、皆さんYouTubeほか動画サービスを閲覧される機会もあるかと思うんですけど、集中して見物している動画の途中に何の前触れもなく表示される動画広告に関しては「クソウザ感」を覚えると思います。私が言うのもなんですが、超ダルくないですか、あれ。スマホ投げたくなるぐらいの。そのぐらい、動画の途中に広告が挟まるというのは、利用者の体験(エクスペリエンス)によろしくない影響を与えるわけですよ。

そのような丁寧な対応もなく、前倒しで「広告つきになります」と言われてビックリするのがコンテンツの提供者側です。とりわけ、日本では放送免許を取り地上波でテレビ番組を提供している民放各局やNHKもNetflixに動画コンテンツを提供しており、そこに広告がついてしまうわけですから極めて深刻な事態となります。

テレビ局はTVerやGYAOの広告枠も自社で販売している

当たり前のことですが、民放各局は自社で制作した番組に対してスポンサーの広告をつけてテレビ放送しており、外部配信先であるTVerやGYAOの広告枠ですら自社で販売しています。いわゆるAVOD(広告つき無料配信)をコンテンツ提供先には認めていないわけです。今回の場合は広告つきで安値の会員プランを提供するという意味においては、Netflixが主張するようなSVOD契約で契約上カタがついているとは到底言えません。

Netflixは放送法の対象事業者ではなく、国内法規では明確にこの法律で適法性が問われると指摘されることはないかもしれませんが、契約の一方的な不利益変更になる可能性があり、動画配信事業者のほうが契約上優越しているという時点で独占禁止法的ロジックになってくるようにも見えます。

そして、本件Netflixとのすみ分けにおいては「われわれはスポンサードされた番組の放送を仕事にしている、Netflixは彼らの有料会員に対して動画をオンデマンド閲覧させている事業である」という立て付けで、Netflixにコンテンツを提供しています。民放各局も会員制オンデマンド放送やってるじゃねえか競合やんけという話もありますが、本稿では聞こえなかったことにします。