ガリガリ君の根本は「コミュニケーションツール」
「ガリガリ君の場合、食べなくても商品を楽しみにしてくれている方がいらっしゃいます。そういう方たちからも意見をいただいたので、期待に応えなくてはいけないと攻めた味に挑戦しようってことになりました。
そこで、あらためて思いました。ガリガリ君の根本ってコミュニケーションツールだなと。すると駄菓子屋のシーンが頭に浮かびました。そして、駄菓子屋で人気なのはコーンポタージュ味のお菓子だという調査があったのを思い出しました。
もうひとつ。夏の暑い日にテレビを見ていたのですが、お笑い芸人の方がジュースじゃんけんをやっていて、負けたほうの罰ゲームはジュースを買ってくるというものでした。そこで熱々のコーンポタージュを買ってきて、暑い中でもみんな飲んだ後、『これ、おいしい』っていう反応だったんです。
その時、僕はコーンポタージュ味を開発しようと決めました」
企画書よりも「自分で試作する」のが最強のプレゼン
岡本がまずやったのはコーンポタージュ味のガリガリ君を自分で作ってみることだった。
「コーンポタージュを買ってきて、それを自宅の冷凍庫で凍らせたわけではありません。ゼロからレシピを考えて作ってみたんです。コーンの粒を入れたりもして試作してみました。その後、社内のプレゼンに臨みました。自分自身でガリガリ君やアイスを試作するのは僕が初めてじゃありません。うちの会社ではみんなやっていることじゃないかと思うんです。
自分にしかできないものを世の中へアウトプットしようと思ったら、企画書よりも現物を作ること。他の人が思いつかないものを世の中に出そうと本気で思うのなら、魅力を盛り込んで価値のあるものを作る。大事なことは企画書ではなく、形にしてみることです」
試作した後、岡本をはじめとするチーム8人はプレゼンに向けて商品開発をスタートした。その時、5つの味をプレゼンすることになっていたのだが、コーンポタージュだけは20回以上も作り直し、味の完成度を8割にまで高めた。一方、他の4つの味は完成度をわざと半分以下にしておいた。
そうして、プレゼンに出したところ、完成度の高いコーンポタージュの発売が決定した。絶対にやりたいものを実現させるにはプレゼンを通すためにも作戦を立てて、コーンポタージュ味の実現を優先したのである。