商品開発力を育てている「1000本アイデア」

岡本は「うちの会社が商品開発に優れているとしたら、それは入社してからの『1000本アイデア』にあります」と言った。

「開発志望で入社したら、1年目に1000本アイデアというのをやります。1年間に1000のアイデアを考える。私もやりましたが、300本ぐらいまでは余裕でできるのですけど、その後はアイデアが枯渇してくる。自分が生活してきた環境だとそれ以上はなかなか考えつかないから、雑誌や店舗、SNSのようないろいろなところにアイデアを取りにいかなきゃならない。自分の世界をどれだけ広げられるかが勝負だと思うんです。

アイデアは企画書ではなく、メモみたいなものでいいんです。それでも、味、コンセプト、価格、どんな商品かも含めて商品設計を考えてまとめなくてはなりません。1日3個、毎日考えると1年間で1000個になります。

入社して半年は製造の研修があって、その後、OJTで仕事をしながら1000本アイデアをやるから、正確には入社して半年後から1年間かけてやるわけです。

ほとんどは採用されませんが、採用されたとしても商品になるかどうかは分かりません。例えばこういうアイスを食べたいと思ったとしても、原料があまりに高価だとしたら、発売できません。アイデアを出した後から本当の仕事が始まるのです」

赤城乳業の本庄工場
写真提供=赤城乳業
赤城乳業の本庄工場

商品だけでなく、「情報」も鮮度が命の時代

コーンポタージュ味の販売促進ではSNSを使って大きなニュースにすることができた。しかし、岡本はそれから10年がたち、時代はさらに進んでいると感じている。商品の寿命だけでなく、情報の寿命もまた短くなっているからだ。

「プロモーションにおいて、SNSでは話題が出てから落ちるのが早いなと感じています。商品の寿命が短くなっているのもそうですけれど、情報もまた寿命が短くなっています。最近、自分自身、他の人からこんな話を知ってる? と聞かれて、自分が知らなかった情報がすごく多いことに気づきました。

今まではテレビや新聞などの一般メディアを見ていればある程度話が通じたのが、それだけじゃ足りない。SNSまでフォローしていないと情報が拾えない。

そして、たとえ拾ったとしても、いろいろな情報が入ってくればくるほど、覚えていられるものが減りますし、また、興味もどんどん新しいものに上書きされていく。

ですから、うちの商品のプロモーションでいえば、ニュースリリースは以前は2週間前から出していたのですが、今は1週間前に出すようにしています。発売直前に出して話題を発信し、そのまま商品発売に持っていこうとしています。そして、情報の質も大事です。話題になる情報でないと商品は売れない。短い期間に鮮度と質のある情報を次々と繰り出していかなくてはならない。そりゃ大変です」