貨物部門で貨物機を持つと、まず専用機からスペースを埋めていく努力をしなくてはならないが、JALは貨物機が無いシンプルな輸送を行っている。床下輸送ビジネスはコロナ化ではさらに進化した。旅客を乗せない運航便を貨物専用便として飛ばす決断が早く、機動力が高いというものだ。
JALは、2020年度は1万5299便もの旅客機貨物便を運航。2021年度はさらに4%ほど実績を伸ばして1万6000便ほどの便数を飛ばした。それでも足りなければ借りるというのだ。
この姿勢は2010年の経営破綻から、現在まで一貫して守られている。
実際に、国内貨物の事例になるが、2022年1月にJALとヤマト運輸は2024年より国内路線でエアバスA321ceoP2F貨物改造機3機を運航開始すると発表した。貨物機はヤマトグループが購入し、運航はJALが担うが、実質の運航会社は同型機を持つ傘下の格安航空会社(LCC)ジェットスター・ジャパンである。ここでもJALは貨物機を保有することを避けた。
外注と共同運航でリスクを避ける
大岩氏は将来の貨物事業のあり方についても語ってくれた。
「2025年までの中期経営計画で貨物の売り上げ2000億円を掲げていますが、この数字は日本を基点とした発着ビジネスというよりは、視野を広げてアジアのエラインとして欧米をつなぐグローバルな視点でビジネスを行っているからです」
効率よく稼ぐことができる理由がもう一つある。次に述べる「外注」だ。
JALは2021年からベルギーのASL航空の貨物機スペースを販売している。仮に貨物需要が減少してもJALの業績に影響は出ない。その他JALは多くのエアラインと路線で、機材をチャーターし、コードシェア契約を取り交わしている。
自社で貨物専用機を持たなくても、主要都市への他社提携では旅客便床下スペースで足りない供給分を満たせている。他社との提携強化のために、JALは2021年6月に貨物路線部提携室を誕生させた。これらの提携では貨物特有の片道輸送の需要にも的確に応えることができる契約になっている。