これを裏付けるのは、国土交通省航空局が発行した「国際航空貨物動態調査報告書」が参考になる。最新の2020年版では調査の背景・目的の中で、「平成29年(2017年)には、AI・IoTの進展・拡大を背景とした世界的な半導体需要の高まりや、自動車のEVシフトや電装化関連の新たな自動車部品需要の発生により、半導体関連貨物(半導体等電子部品、同製造装置)や自動車部品の荷動きが活発化、輸出、輸入ともにプラスに転じた」(原文ママ)とある。しかし、内容が明確ではない。

そこで、古くはなるが2010年3月版を見てみる。そこでは「わが国の国際航空貨物(重量ベース)は、産業構造の高度化に伴う製品の高付加価値化・軽薄短小化による運賃負担力の増加を背景に、企業活動のグローバル化が航空輸送の高速性への選好を高めたこともあって、平成16年(2004年)度までは増加基調で推移してきた」(原文ママ)と指摘してある。

1990年代から2000年代にかけて、「高付加価値」「軽薄短小」「運賃負担力が高い」という特徴をもつ貨物が増えた。それゆえ、必ず貨物機で運ばなければならない荷物は、貨物ニーズの一部になったのだ。

1980年ごろに伊丹空港で撮影したJALボーイング747-246F(N211JL)
筆者撮影
1980年ごろに伊丹空港で撮影したJALボーイング747-246F(N211JL)

「片道ビジネス」の宿命

旅客事業は往復輸送が基本だ。出張でも、観光でも乗客は目的地で用字を済ませ、再び出発地に戻って来る。これに対し、貨物事業は片道輸送となる。

貨物は出発地から出荷し、目的地で貨物を引き渡す片道輸送で業務は終わる。貨物は旅客の倍の営業努力で往復の航空機を埋める努力を必要とする。ゆえに大型貨物機で往復がともに満載となる目的地は多くはない。ともすれば片道は「から荷」なことさえある。

JALでは、日欧間は比較的双方で貨物スペースが埋まるが、日米間では日本発に偏る傾向があると分析している。このような傾向からも、輸出入双方で貨物機を必要とする物量が多いわけではないと言える。

必要なら貨物機を借りればいい

床下スペースの活用でローリスク・ハイリターンを生み出すJALの貨物だが、需要が拡大すれば専用機を再び手に入れたいと思わないのだろうか。

JALの貨物事業で収益を管理する貨物路線部路線室・国際路線収入グループ長の大岩慎太郎氏は、こう話す。

「JALにとっては貨物機という固定資産を有しないことは、経営破綻後のスリムで筋肉質な経営体質となるために見直されたものでした。荷主やフォワーダー等お客さまのニーズを早期に汲み取って、自社旅客機の床下スペース、他社貨物機のチャーターで需要と供給を合わせた輸送力を提供していくことが必要と考えています」