旅客機の床下スペースをフル活用

前述の通り、JALの貨物は旅客機の床下スペースを活用しているが、どれぐらいの空間があるのかはあまり知られていない。

例えば国際線の主力機材となるワイドボディー機のボーイング777-300ER。床下の貨物スペースは旅客が満席で手荷物を搭載しても25トンを超える貨物を搭載できる。容積で換算すると120M3という空間だ。これは航空機に搭載されるULD(搭載用具)を12台搭載できるほどの空間になる。

一方の貨物専用機は、高さ160cm以上の貨物を搭載できることが優位点となり、最大高はANAの持つボーイング777貨物機の主貨物室で292cmとなる。搭載重量は約100t程度となる。つまり高さがあり、ULDを超える長さのある荷物を積めるのが貨物機で、旅客機の床下スペースは小型の荷物だけが対応可能となる。

ANAの貨物機ボーイング777F型機。
筆者撮影
ANAのボーイング787-8の床下に搭載されるパレット貨物。

だが実際は、貨物機に乗せなければならない「高さのある荷物」は限られる。床下には搭載できず、専用の貨物機で輸送しなければならない荷物の代表例が半導体の製造装置だ。このほか航空機エンジン、医療機器、金型、重工業機器が挙げられる。

また、輸送費が商品価格に反映されるため、組み立てる前の部品の状態で搭載される場合が多い。分解できない機械類は、輸送費用が比較的安い海上貨物で運ばれるのが一般的だ。

つまり、貨物機が無くても十分、航空貨物のニーズに応えられるのだ。

JALは、貨物機でしか輸送できない「高さのある荷物」の貨物ニーズは、全体の2割程度にとどまると試算している。2割の貨物を獲得するために、わざわざ固定費などのコストがかかる貨物機を保有しようとは考えていない。

荷物は「軽薄短小」へ

航空貨物は、海上輸送に比べ輸送費用が高くつく。そのため付加価値の高い工業製品が対象となる場合が非常に多い。工業製品と言えど、年々その質的な傾向は変化している。

1990年以前は、日本で生産されたテレビ、オーディオ、ビデオ機器といった国産の電化製品が航空貨物で輸出されていた。しかし、それ以降、日本の製造業は円高の影響を回避するため国内の製造拠点を中国や東南アジアに移転。「かさばる荷物」は減少していった。

かわりに小型の電子部品が主な輸出アイテムとなった。今では日本から輸出された部品が中国や東南アジアの工場で組み立てられ、製品化され、各国に輸出される。つまり貨物のサイズは小さくなったのだ。