最も脂ののった時期を不安定な足場で過ごす

年齢の話を時系列的に考えてみましょう。学位を取得するのが27歳で、5年ほどポスドクをすると32歳。30代前半で大学教員になる場合が多いですが、ここでさらに5年間の任期付職です。しかもその後、安定したポストが得られる保証もありません。

このご時世、安定した身分など存在しないに等しいですが、それでも35歳過ぎまで定職に就けないというのはなんとも辛い職業です。

ちょうど人生でも最も脂ののった時期で、結婚や子育て、家の問題や親の介護などいろいろなライフイベントが同時に降り掛かってくる時期でもあります。

コインの山の上に立つ人のフィギュア
写真=iStock.com/hyejin kang
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研究後、帰宅してから本当の仕事が待っている

私自身は、博士課程の途中で結婚を決め、ちょうど30歳の時に子供が生まれました。

妻の育休が明けると、妻の方が仕事が忙しかったので、時間に比較的自由の利く私が育児を主に担当することにしました。理研の所内に開設されている保育所に子供を預けて、お迎えに行くという生活を1年間しました。この間も1年任期ではありますが、10時から17時までしか働くことができません。しかしおかげで、効率的に仕事するというのが骨の髄まで染みつきました。

その後、公立の保育園に移ってからも、8時に預けてから延長して18時までと、少しは仕事の時間に余裕ができたものの、子供中心で動いていたことは間違いありません。さらに、家に帰ってからが本当の仕事で、食事やお風呂や洗濯などさまざまな家事をこなして、疲れ切って床で伸びていたこともあります。

研究者は、裁量労働なので比較的働き方に自由が利くとはいえ、子育てなどと両立するのは大変です。生物系だと、生き物を飼育していることも多いので、その事情でどうしても土日出勤しなければならない状況もあります。

うちの子もようやく小学生になりましたが、低学年ではすぐに帰宅しますので、学童がお休みの時はやむを得ず子供を研究室に連れてくるとか、子どもが寝静まった深夜にひっそり実験をするとかするしかありません。子供が研究室に遊びにくることに寛容なところもありますが、もちろん危険もたくさんあります。