結婚式から新婚生活まで
「披露宴はしない」というのが妻の希望だったため、友人たちには連絡をしなかった。ただ、教会での挙式の後、ライスシャワーは友人たちがやるものだとプランナーに言われ、狩野さんは親しい友人に連絡を入れることに。
友人は、狩野さんが結婚すると聞いて、「結局あの子かよ」と笑った。
ライスシャワーの件を話し、「何人かに出てもらいたいから、お前、適当にみつくろって連れてきてくれないか」と狩野さんが頼むと、友人は「こういう時に『適当』とか『みつくろう』って言葉使うか? お前らしいな」と言って電話を切った。
そして、狩野さんも妻も29歳の1991年1月、結婚式当日。ウエディングドレス姿で現れた妻を見た途端に出た、狩野さんの正直な感想は、「女の一番きれいな瞬間がコレかよ……」だった。
狩野さん夫婦は、結婚式の2カ月後に入籍。式直後にしなかったのは、教師をしていた妻が年度の途中で名字が変わるのを嫌がったためだ。
「正直、『何考えてんだこいつ?』と思いました。ただ、今考えれば、挙式後も結婚を回避する余地が2カ月もあったというのに……。残念です」
と狩野さんは悔やむ。
新婚生活までも、挙式から約2カ月かかった。挙式前から新居選びを始めていたが、妻が気に入る物件がなかなか見つからなかったのだ。
1991年3月。ようやく引っ越しの日を迎えた。妻はちょうど春休みに入っており、比較的時間には余裕があった。引越は、狩野さんの父親と妹、近所に住む妻の叔父夫婦が手伝ってくれた。だが、「ガステーブルを買ってからくる」と言っていた妻が、一向に現れない。
結局妻が現れたのは、引っ越しが全て終わった後だった。
「夫婦2人だけの引っ越しなら気にしませんが、家族や親戚に手伝ってもらっておきながら、本人が来ないなんて信じられません。私は女性に関してはだらしない男ですが、その他は常識人のつもりですので、当然その場で妻を叱りつけました」
すると妻は、「ゴメン、ゴメン。……えっと、5回ぐらい言えばいい?」と平然と言い放つ。狩野さんは、あきれてものが言えなかった。