「消費を正当化する理由」がほしい

そこで、近年、注目を浴びてきたのが心理を重視する行動経済学です。

わたしは行動経済学が注目される以前から、「現代の経済や消費社会は経済学だけでなく、心理学で考えなければならない」と唱えて、お客様の心理を重視した経営の大切さを説き続け、自らも実践してきました。

そのため、行動経済学関連の本を読んだときは、「わたしがこれまで話してきたことと同じ内容が書かれている」と感じたものです。

現代の消費者には、損を回避したいという心理が広がっている。ただ、その半面、何も消費したくないわけではなく、正当な理由があれば、何か買いたいと思っている。つまり、現代の消費者は「消費を正当化する理由」を求めているのです。

「プチぜいたく」にもメリハリをつける

このことに関して、マーケットライターで世代・トレンド評論家でもあり、消費者の購買行動に詳しい牛窪恵さんと対談させていただいた際、興味深いお話を伺いました。牛窪さんは、「おひとりさまマーケット」「草食系男子」など、独創的なキーワードを駆使したマーケット分析に定評があります。

牛窪さんによれば、一億総中流といわれたころと比べれば、いまは階層化が進んだものの、どの階層の人たちも、「自分が大切にしていることにはお金をかけ、それ以外の出費はできるだけ抑える」というお金の使い方をするようになっており、それを「メリハリ消費」と呼んでいました。

たとえば、お皿を買うときも、ライフスタイルにこだわり、その日の気分に応じて、100円ショップで買ったり、高級な専門店で買ったりと使い分けがどんどん進んでいるというのです。つまり、そのときの心理状態で、異なる買い物体験を選んでいるわけです。

興味深かったのは、流通のPB(プライベートブランド)商品についても、メリハリ消費があるという話でした。

平日はセブン&アイ・ホールディングスのPBであるセブンプレミアムの惣菜などを買う。そして、週末はワンランク上のセブンプレミアム ゴールドのような、価格は2倍以上高くても、高品質の原料や高級店の調理法を取り入れ、付加価値をいっそう高めたより高品質の商品を買うといった具合に、使い分けをはっきりさせる。

セブンプレミアム ゴールドを買う際も、NB(ナショナルブランド)商品と比べて値段がどうかと比較するというより、「頑張ったから自分へのごほうびにゴールドを」という心理的なメリハリで消費するケースが目立つというのです。

週末の時間を豊かな気分で過ごすことを大切にし、「ごほうび消費」でちょっとしたぜいたく、いわゆる「プチぜいたく」をするというわけです。