※本稿は、太宰北斗『行動経済学ってそういうことだったのか!』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
「人類もサルもあまり違いがない」とわかった実験
人類は他の動物たちには到底できない文明社会を築き、立派に経済を回しています。
ただ、実は私たちが描き出す経済上の反応は、合理的にも非合理的にも、サルたちとそんなに違いがないようです。
「人類もサルもあまり違いがない」、なぜ、そんなことがわかるのでしょうか。理由は簡単。サルで試してみた人がいるからです。
キース・チェン氏がヴェンカット・ラクシュミナラヤナン氏、ローリー・サントス氏と取り組んだのは「サルたちに貨幣を与えたらどうなるか」という実験でした。
実験で用いられたのは、不換性の貨幣(トークン)で、現代の私たちが使うお金と同じ仕組みのものです。貨幣は貨幣でしかなく、それを食べたりすることはできないので、持っているだけではサルたちにとってなんの意味もないように思えます。
サルも予算と価格を理解し、消費行動を変化させた
実験には、7匹のオマキザルが参加しました。普段生活している場所から1匹ずつ実験会場に移ると、サルたちには12枚の貨幣、つまり、おこづかいが与えられます。その予算の中から、サルたちは大好きなリンゴやゼリーなどの甘い物を、2つの自動販売機のどちらか一方から選ぶように購入できます。
「予算を頭に入れて、自分が最も満足いきそうな合理的な選択をする」、まさかサルにそんな難しいことはできないと思いますよね。
しかし、サルたちは貨幣経済の仕組みを理解して、驚くべき損得計算能力を見せたのです。経済学史上に記録されたサルたちの偉業の数々を、かいつまんでお伝えしておくと次の通りです。
・サルたちも予算と価格を理解して、満足いくように消費行動を変化させる(十分、合理的っぽい)
・合理的なサルたちでさえ、ヒトと似たように選択を誤ってしまうことがある(時折、非合理的っぽい)