時制表現が弱い言語の話者は健康管理も上手い

仮に、Aグループが「時間割引率が低く将来の価値を重く受け止める人たち」というのであれば、貯蓄率のほかにも、健康管理などの意識も高くなるはずです。分析の結果では、時制表現の弱い言語の話者ほど喫煙率が低く、肥満度も低いほか、運動習慣や握力、肺活量にまで差があることが示されました。

研究上で重要な点は類似の傾向が、同一国内の、所得水準も教育水準も家族構成も同じで、使用言語だけが違うような話者間でも認められている点です。

言語を軸に語ってきましたが、時間割引率の内容をご理解いただけたでしょうか。

時間割引率の低い人ほど、将来のための行動を積極的に取れる我慢強い人、ということです。ただ、将来への捉え方が本当に言語によって変わってしまうのなら、それも問題ですが、時間割引率自体はあくまで個人の好みということでもあるでしょう。

でも、時間割引率がみなさんの世界に与える影響は少し複雑で、もうしばらくおつき合いください。

「月7000円で使いたい放題」or「10回利用で1万円」

「お金」の話、「健康管理」とくれば、フィットネスクラブです。みなさん、利用していますか。

仮に、「月7000円で使いたい放題」の料金プランと、「10回利用で1万円」の料金プラン、どちらを選ぶか聞かれたらどちらにしますか?

スニーカーやダンベルとスケジュール帳
写真=iStock.com/Gam1983
※写真はイメージです

使いたい放題のプランを選んだ人は、もしかしたらうっかり損をしているかもしれません。

実は、7000円の料金プランを選んだ人は、入会している間に6万円も損していたという話があるのです(研究データのドル表記を1ドル100円換算で表記しています)。

ステファノ・デラヴィーニャ氏とウルリケ・マルメンディア氏が、アメリカのフィットネスクラブの入会者7752人を3年間にわたって調査した結果、なんと月の一括払いを選択した人は1カ月あたり平均4.3回の利用しかしていませんでした。つまり、1回利用するたびに1700円ほどを支払うことになるわけです。

最初から10回利用の回数券を買っておけば1回あたり1000円で済んだわけですが、どうしてこうなってしまうのでしょう?