安倍晋三元首相が銃撃され亡くなってから1カ月余り。妻、昭恵さんの動向にも注目が集まっている。以前、執筆した記事について昭恵さん本人から連絡を受けたというコラムニストの河崎環さんは「これからも、『モリカケ』などの大きな問題を引き起こした元ファーストレディーであるという事実は消えない」という――。
安倍晋三元首相夫人 安倍昭恵さん
写真=AA/時事通信フォト
安倍晋三元首相のひつぎをのせた霊柩車で通夜の行われる東京都港区の増上寺に向かう妻の昭恵さん。2022年7月11日撮影

MORINAGAへの屈折した思い

後述するちょっとした事情があって、私は個人的に森永乳業・森永製菓の製品に対して屈折した思いがある。不買運動だなんて、そんな大層なことは考えない。哲学的でもなければ政治的ですらない。ちょっとした、ごく個人的で卑近で矮小わいしょうなわだかまりというか、「森永ほど日本を代表する大食品グループなら、私なんかが数百円買わなくたって、十分に売上あるじゃない?」というほとんどただのひがみから、同じようなものがあるならば競合他社製品を買おうとする。だが私一人がそんな消費行動をとったところで、塵や花粉、いやウイルスレベルの選好にすぎず、すなわち日本を代表する食品会社、大企業森永グループからすれば「無」である。

というのも、日本の食品界というのは、国民に長く愛される、優れた森永製品であふれ返っているのだ。

「マウントレーニア カフェラッテ」や「リプトン」の紅茶飲料が森永乳業だって、ご存じでした? 私が「これなしではティータイムにあらず」と信じているおいしいバタークッキー「チョイス」は森永製菓で、同じほどの高コスパ製品は他に見当たらない。幼い頃から親しんできた「チョコボール」も「ハイチュウ」も、ヨーグルト「ビヒダス」も森永だ。「チョコモナカジャンボ」のない日本の夏なんて、夏じゃない。「ピノ」はハートや星型が当たると小さく嬉しいんだよねぇ。そうか、クラフトやフィラデルフィアのチーズ製品は、日本では森永乳業だったのか……。そして私なんかがどうあらがおうとも、ココアはやっぱり森永なのである!

そして所詮しょせんはうっかりぼんやりした人間である私は、いつもおいしく食べたり飲んだりしてから、ふと手の中のパッケージの隅に羽を広げた天使のマークと「MORINAGA」の文字を発見し、「これも森永か……」と悔しがる日々である。

モリナガ・イズ・エブリウェア(森永はあちこちに存在する)。すみません森永さん、やっぱり御社すごいです、日本国民の食生活をこんなに豊かにして下さってありがとうございます。他社のを買うぞなんて言ってごめんなさい、ぜひ今後ともお世話にならせてください……(弱い)。

カンのいい読者の皆さんなら、既にお分かりであろう。私が森永製品に屈折した抵抗を見せるのは、そう、森永が元首相夫人・安倍昭恵さんの実家という、うっすらとした苦手意識からである。