昭恵さんへの返事

炎上上等の物書きキャリア20年超、自分の「作品」である記事についてお話しさせていただくのは、正門を叩いて来られた客人のみだ。

「正式に公開されている記事へのお問い合わせ」は、その媒体へ正式にお問い合わせください。編集部で正式に扱わせていただきます。私は、「ご連絡ありがとうございます」としながら、安倍昭恵さんへそうお返事をした。そしてこのプレジデントオンライン編集部に「このようなことがありました」と経緯を報告し、マスコミ人としての使命感から、一番売れている週刊誌と老舗のワイドショーにも相談した。社会人の基本、報告連絡相談のホウレンソウである。

「元ファーストレディー」の今後

安倍晋三元首相が、旧統一教会に恨みを持つ山上徹也容疑者の手製銃から発された凶弾によって帰らぬ人となったのは、もう約1カ月前のことになる。憲政史上最長政権を担った元首相。経済重視の安定保守政権ゆえの順当な国力復調を支え、いまだ激しい論争を呼んではいるが、新しい日本の方向性を明確に示すリーダーシップを発揮した、平成令和日本を代表する政治家。政治的な賛否は一旦き、その貴重な命が理不尽にも奪われたことに無念を感じ、心から哀悼の意を表したい。

事件当初、世論はこれを政治テロと捉えた。「民主主義への挑戦」「言論封殺だ」「政治は暴力には屈しない」との反応であふれたが、事件の詳細が明らかになるにつれて一転、世論は大きく3つの方向へと分離した。

一つめは安倍元首相を「日本国の威信を取り戻すべく尽力した」と美しく英雄視する流れ、二つめはそれを阻止する意図でモリカケ問題を再燃させ、かつ旧統一教会と政界の「真の関係」を追及する流れ、そして三つめが、秀才でありながら40代にして非正規労働者であったと報道される山上容疑者を「弱者の時代の不遇な英雄」視する流れである。

政治一家に生まれ育った安倍晋三氏は、その死すらも政治的に遂げた。ご遺族の悲しみたるや、そしてマスコミ対応、国葬をめぐる論争での疲弊たるや、想像に難くない。だが安倍元首相へのひとりの個人としての哀悼の念と、政治家としての評価は別の軸で考えねばならない。日本だけではない、世界がこの劇的な死をどう悼むのが適切か、探っている。

そして配偶者の安倍昭恵さんは、世間が彼女の存在を「安倍晋三夫人」と自動的に定義したほどに揺るがぬ存在であった「ご主人」の亡きあと、どのような生き方をされていくのか。不明瞭な社会貢献活動の結果、あの「忖度そんたく」という言葉を一躍有名にし、国民の反感を煽り内閣支持率を急落させた元ファーストレディー、という事実までをも埋葬することはできないのである。

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