この操作は上部からの命令を受けてのものであり、相当な圧力がかかっていたようだ。記事中で従業員は、「率直なところ、断れるようなものではなかったです。やらなければ、誰かが刑務所に行くことになります」と語っている。香港のデモに関する報道など、特定のニュースを米国向けTopBuzzの配信から削除することもあったという。

ByteDanceは事実関係を強く否定しているが、バズフィードはこの一件がTikTokに関しても懸念を巻き起こすものだと指摘している。

若者の「フェイスブック離れ」は重大リスク

中国企業が仕掛けるTikTokは、アメリカ発祥の既存のソーシャルメディアが勢いを失ったタイミングで躍進し、若いアメリカ人ユーザーたちの心をつかんだ。

対照的に、米Meta社が展開する2つのプラットフォームは迷走が続いている。Instagramは動画優先の表示方式を取り入れて既存ユーザーの不評を買い、Facebookは動画機能の「リール」を投入してTikTokの後追いをはじめた。これまで米国企業が握っていた市場を中国企業が掌握しはじめたことで、米政府内には相当な焦りがあることだろう。

米ワシントン・ポスト紙などが2月に報じたとおり、バイデン政権は外国政府に悪用されるおそれのあるアプリを対象に、政府の監査権限を強化すべく検討に入った。米商務省がアプリのソースコード提出を要求できるなど、監視の権限を拡大する方針だ。

ホワイトハウスの前で反戦抗議をする人々
写真=iStock.com/E4C
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だが、すでに若者層に浸透したTikTokは、政策ツールとしても敵視できない存在となってきている。米テックメディアの「ヴァージ」は、バイデン氏を支持するNPOが4月、中間選挙をにらんだ若者への政策アピールのために独自のTikTokアカウントを開設したと報じている。米政府としても、若者にアプローチするうえですでに無視できないコミュニケーションのチャネルとなった。

軍の動向が漏洩する可能性があるなど、TikTokは「国家安全保障上の重大な脅威」とまで考えられるようになっている。だがバイデン政権としては、すでにアプリがアメリカに根を下ろしてしまった以上、完全な敵視もできないという歯がゆい状況に置かれているようだ。

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