山本五十六が想像した以上の悲惨な結果が待っていた

沢本頼雄海軍次官(当時)の手記によれば、連合艦隊司令長官、つまり現場の最高司令官である山本五十六は1941年9月29日、対米戦を予想して、永野にこう言っている。

「日本が有利なる戦を続け居る限り米国は戦を止めざるべきを以て戦争数年に亘り、資材は蕩尽せられ、艦船兵器は傷つき、補充は大困難を来し、遂に拮抗し得ざるに至るべし。のみならず戦争の結果として国民生活は非常に窮乏を来し、内地人は兎も角として、朝鮮、満州、台湾は不平を生じ、反乱常なく、収拾困難を来すこと想像に難からず。かかる成算小なる戦争は為すべきにあらず」(『戦史叢書 大本営陸軍部 大東亜戦争開戦経緯〈5〉』)

アメリカは、日本が有利に戦っている限り戦争をやめないだろう。戦争は数年に及ぶ。日本の資材はなくなり、補給が難しくなる。アメリカに張り合うことは困難になる。日本内地はともかく、併合した朝鮮や植民地の満州、台湾などの統治も難しくなる。勝ち目の小さい戦争はすべきでない。米駐在武官を経験し、相手の国力や国民性をよく知る山本らしい卓見であった。

戦争はおおむね彼の予想の通りに進んだ。ただ、その被害の大きさは山本の想像以上であったかもしれない。

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