安倍晋三元首相を失った自民党・岸田政権はこれからどうなるのか。ジャーナリストの鮫島浩さんは「安倍氏の『盟友』とされる麻生氏が権力の中心になる。安倍氏の悲願である憲法改正はトーンダウンし、岸田首相は消費増税を進めるだろう」という――。
岸田文雄首相(自民党総裁)の記者会見に出席した麻生太郎副総裁(前列左)と茂木敏充幹事長(同右)=2022年7月11日、東京・永田町の同党本部[代表撮影]
写真=時事通信フォト
岸田文雄首相(自民党総裁)の記者会見に出席した麻生太郎副総裁(前列左)と茂木敏充幹事長(同右)=2022年7月11日、東京・永田町の同党本部[代表撮影]

安倍元首相亡き後の自民党の行方

「私もそのうちそちらに参りますので、その時はこれまで以上に冗談を言いながら、楽しく語り合えるのを楽しみにしております。正直申し上げて、私の弔辞を安倍先生に話していただくつもりでした。無念です」

選挙演説中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相(享年67)につづいて、東京・増上寺での家族葬で「友人」として弔辞を述べた麻生太郎元首相(81)への称賛が広がっている。ネットでは「麻生太郎」がトレンド入りして「泣ける」「盟友を失った麻生さんの心からの無念が伝わる」というコメントが溢れた。

麻生氏が14歳年下の安倍首相を副総理兼財務相として支えたのは衆目の一致するところである。しかし、二人の蜜月関係は昨年秋、岸田政権発足とともに実は終焉していた。それは自民党人事にも如実に表れている。共通のライバルであった菅義偉前首相や二階俊博元幹事長、石破茂元幹事長らが次々に失脚。権力闘争に勝ち残った二大巨頭の「盟友」関係は軋み始めていたのである。

岸田文雄首相の後見人としてキングメーカーの座に就いた麻生氏は、安倍氏が求める「高市早苗幹事長、萩生田光一官房長官」の人事案を一蹴。岸田派ナンバー2で安倍氏とは地元・山口県で長年の政敵である林芳正氏を外相に抜擢したうえ、安倍氏率いる最大派閥・清和会(安倍派)の次世代ホープとされる福田達夫氏(彼の父である福田康夫元首相は安倍氏と犬猿の仲で知られる)を自民党総務会長に、同じく清和会ながら安倍氏とは距離のある松野博一氏を官房長官に登用し、安倍氏の影響力をそぐ人事をあからさまに断行した。

政敵の派閥に所属する次世代ホープや不満分子を引き立てて足元を揺さぶるのは自民党の派閥闘争のお家芸だ。