この後、民主党は衆院選で惨敗して下野し、自民党は安倍氏の下で政権復帰した。安倍政権は3党合意に基づいて二度も消費税増税を実行したのである。増税に尻込みする安倍氏が最後に同意したのは「3党合意がある以上、野党も徹底抗戦できない。世論が野党支持に流れることはない」という財務省の説得があったからだ。
「民主党政権で消費税増税を進めた菅氏、野田氏をはじめ、菅内閣の官房長官だった枝野幸男氏、野田氏の側近である蓮舫氏ら立憲民主党の重鎮たちはいずれも3党合意当時の民主党の実力者です。今回の参院選で立憲民主党は長引く不況や物価高を理由に『消費税率を時限的に5%へ減税する』という公約を掲げましたが、あくまでも時限的減税であり、立憲の重鎮たちは本質的に消費税増税は必要だったという立場。これから3年は国政選挙が予定されず、立憲自体も支持率が低迷して展望が開けないなかで、岸田政権から呼びかけがあれば、蚊帳の外に置かれることを嫌って、かつての3党合意のようなかたちで消費税増税に乗る可能性は否定できません」(立憲若手議員)
消費増税には千載一遇の好機
円安物価高はとどまる気配がなく、国民生活はますます厳しくなると悲観する向きは強い。そのなかで本当に消費税増税に踏み切ることなどできるのか、にわかに信じがたいところはある。しかし、財務省には「消費税増税を前に進めることが最も評価される」というDNAが色濃く受け継がれ、そのために政界工作を尽くしてきた。
安倍氏という巨魁が突如として姿を消し、麻生氏と財務省の権力基盤が突出した今、千載一遇の好機だとして消費税増税を推し進める可能性は少なくない。そこへ野党まで加担し、消費税増税のための「大政翼賛体制」が出現したら、国民はどのように抵抗すればいいのか。
参院選は有権者の二人に一人が棄権するなかで自民党の歴史的大勝に終わり、しばらく国政選挙はない。与党一色に染まりゆく国会に対し、私たち有権者は世論の高まりなど選挙以外の方法で意思を表明していくしかない。