合憲か違憲かを決めているのは最高裁ではなく…
二、憲法解釈の独占
法律の中の最高峰である憲法の解釈を独占しています。すべての法律の最上位にあるのが憲法です。法律も、政令も、省令も、すべて憲法に従わなければなりません。
形式上は、合憲か違憲かを決めるのは裁判所です。憲法解釈に異議があるなら裁判所に訴えて一審、二審、三審と上がって最終的には最高裁判所が決定する……のが建前です。
ちなみにフランスの最高裁は破毀院(破棄院)といいます。つまり下級審が決めた憲法解釈の誤った判決を破棄するから破毀院。
最高裁の最大の仕事が憲法解釈であるはずなのですが、最高裁が憲法判断をしたなど、あまり聞いたことがないと思います。実際、判断していません。その証拠に最高裁が憲法判断を“しそうだ”というだけで新聞の一面に掲載されます。
最高裁が憲法判断をする時は、必ず大法廷と言って一五人の判事全員が集まる法廷が開かれるので、大法廷が招集されたニュースは「最高裁が憲法判断をするかもしれない」を意味するので、新聞の一面を飾るのです。もっとも、不要と判断されれば、憲法判断はされませんが。
最高裁判事ポストは天下り先の「指定席」
実際に憲法判断しているのは、内閣法制局です。彼らは日常的に「判断」しています。そして事実、最高裁よりも法律に詳しい人々がそろっています。
また最高裁判事の一人は、内閣法制局長官の天下り先として、指定席と化しています。要するに、変な判決を下さないように監視しているのです。内閣法制局の解釈に傷がつくような訴訟が最高裁まで上がってきたら、そこで阻止します。判決は多数決で決まるのですが、仮に内閣法制局の解釈をくつがえすような判決を出そうとしたら、長官出身の判事を説得しなければなりません。その人の仕事について、その人以上に詳しくなって論破しなければなりませんが、そんなのはほとんど不可能です。
最高裁判事は一五人で、「いっちょ上がり」の人たち。一方、内閣法制局は七〇人で、日常的に法令実務に取り組んでいます。
予算を握る財務省相手にもへっちゃら
三、予算統制が利かない
財務省、とくに主計局の武器は予算です。これがあるから他の官庁も政治家も財務省に頭が上がらないのです。ところが内閣法制局の予算は人件費一〇億円程度だけなので、「予算を出さないぞ」という脅しがききません。しかも公務員の人件費は人事院勧告を出さなければ削れないので、そう簡単に減らすことができません。