メモ帳は1冊に限定させる

対策としては、まずメモ帳を1冊に限定させること。そして、そのメモ帳とペンを、肌身離さず持ってもらうようにすることです。

そのうえで毎朝、仕事が始まったらすぐにメモ帳を見て、時間軸に沿って今日やるべきことを確認するよう習慣付けます。昼休憩の後も、予定の変更がないかどうか確認し、リストを見直す。1日に最低2回は確認して、自分のやるべきことをチェックする機会をつくります。

上司としては、最初はちょっと面倒かもしれませんが、部下がこまめにメモしたり、メモを確認したりするよう促しましょう。また、なるべく口頭の指示だけをするのはやめて、メールやチャットなど、文字で残る指示もあわせて行うようにします。そうすれば、本人もメモ帳に写すことができて「すっかり忘れていました」という事態を減らすことができます。

また、納期や締め切りの直前だけに進捗を確認するのでは危険です。チェックポイントの数を増やして、細かく進捗を確認しましょう。これについては、次の事例でも詳しくお話しします。

事例(2)困りごとをなかなか相談せず、トラブルが大きくなってから発覚

取引先の人も巻き込んだトラブルが起きているにもかかわらず、なかなか上司に相談したりせず、「もう少し先方の意見を聞いてから報告しよう」「相手から返事が来てから話そう」といううちに問題が大きくなり、そこで発覚する……。報連相のタイミングがわからず、トラブルを大きくしてしまうのです。

そもそも発達障害の人は、ものごとを「0か100か」という物差しで測ってしまうことが多く、あいまいな状況を把握することが苦手です。

報連相というのは、どんな状況になったら相談するかを自分で判断し、上司とコミュニケーションをとっていかなければいけません。困りごとの度合いが10か20ぐらいの、トラブルの芽が小さなときに報連相できていれば、大きな問題にならずにすむのですが、それがわからず、その度合いが100になるまで待ってしまう。周りが気づいたときには、深刻な状況になっていることが多いのです。

こうした場合、上司としては、定期的に報連相の時間を設定するとよいでしょう。たとえば「毎週火曜と金曜の午後3時からは報連相の時間」と決めて、必ずそこで本人に報連相をさせるのです。週に2回ぐらい、仕事の状況を共有することができれば、何かトラブルがあっても大きな問題に発展するのは防げるでしょう。

決まった時間を設定するのが難しければ、日報を書かせるのも手です。日報に報連相の欄をつくり、気になることはその都度書いてもらいます。そうすることで、トラブルが大きくなるのを防ぐことができますし、部下の方も、「これくらいの状態で上司に伝えておくとよいのか」と、報連相のタイミングを学ぶことができます。

机に伏せてノートパソコンごと頭を抱えている男性
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