子供をもうけないのは自己中心的なのか

一方、日本政府が初めてジェンダーやジェンダー論に言及し、人口減に注意を払うようになってから30年余りの歳月が流れました。

日本は、少子化問題で世界の国々の先を行っていますが、中国や台湾など、東アジアの他の国々や地域に加え、イタリアやドイツなどの欧州でも、少子化傾向が見られます。

もちろん、未婚・非婚は、デートや恋愛をしたり性的関係を結んだりすることとは別ですが、米国でも、生涯独身を貫く人の割合は増えています。

ただ、米国で、そこまで少子化が進んでいない背景には、若い移民がたくさんいるという事情があります。例えば、米国には中南米からやって来た人々が多いですが、中南米では、今も文化的に子供を持つことが尊重されます。

しかし、ひとたび白人人口に目を向けると、米国も、出生率の点で日本や欧州に似ています。米国の中流層も同様です。

こうしたことを考えると、日本の若者が社会的・経済的プレッシャーを嫌うように、世界の若者の間でも、誰かと恒久的な関係を結んで子供をもうけることへの関心が薄れているのかもしれません。

保守的な日本政府関係者の中には、「今の若者は自己中心的だ」といった注釈を付ける人がいるかもしれませんが、要は社会的な期待と経済的負担の問題なのです。

子供をもうけることが社会的地位を押し上げる時代は終わった

私たちは、(資本主義の最盛期が過去のものとなった)「後期(晩期)資本主義」に身を置いていますが、その中でも、子供を持つことがもはや社会的ステータスの向上につながらない時代に突入したのだと思います。

というのも、子供を持つと、トップ校に入れなければとか、才能や能力のある子供に育てなければとか、さまざまな形で、大きなプレッシャーが親にのしかかるからです。

そうした親としての役割が親の社会的ステータスを高めてくれるとも言えますが、今やそれは、人々を出産や育児へと駆り立てる社会的・世代的必然性ではなくなったのです。

オンラインでインタビューに応じるフリューシュトゥック教授
オンラインでインタビューに応じるフリューシュトゥック教授