日本では発言権のある地位に就いている女性が少なすぎる

女性に関しても同じことで、日本は依然として大きな問題を抱えています。政府や政界、企業で発言権のある地位に就いている女性の数が「妥当」と言えるレベルに達していないのです。

参議院選挙が迫る中、女性候補者数が増えていることは承知していますが、米バイデン政権やドイツ、フランスの現政権と比べると、女性議員の数が少なすぎます。

企業も同様です。女性が管理職の4割以上を占める米国に対し、日本は約1割にとどまっています(※)

注:米マッキンゼー・アンド・カンパニーの2021年9月27日付報告書によると、米国企業の管理職に占める女性の割合は平均41%。帝国データバンクの2021年8月16日付報告書によると、日本企業の管理職に占める女性の割合は平均8.9%。

日本の企業はゴールとしてダイバーシティ(多様性)の推進を宣言するようになりましたが、以前は、コーポレートガバナンスや投資家向けの指針でダイバーシティの推進をうたうレベルにとどめる企業が目立ちました。しかし、それでは効力が弱すぎます。

男女雇用機会均等法(注)の成り立ちを見れば、一目瞭然です。成立当初は(募集や採用、配置、昇進で)男女を平等に処遇する「努力義務」が定められていただけで、企業に説明責任が求められなかったため、なかなか実質的な影響を及ぼすところまでいきませんでした。

注:1985年成立

「女性は望んでいない」は言い訳にすぎない

企業はもちろん、大学でもそうですが、権力の座にある人々の大半は、外見や発言、行動が自分たちと似ている人材に才能や知性、能力があると考えがちです。そして、それが間接的な女性差別になってしまうのです。

必須の研修やクオータ制導入など、本当の意味でのプレッシャーを与えない限り、権力を持った男性が積極的に女性の採用や登用を考えることは、まずないでしょう。

男性のリーダーは往々にして、「女性は、そうした役割やライフスタイルを望んでいないよ」「能力のある女性が少ないからね」などと口にしがちですが、そうしたことは、すべて「レトリック(巧妙な言葉・言い回し)」にすぎません。

女性には、指導や助言をしてくれる同性のメンターか、女性を子ども扱いしない男性のメンターが必要です。そうでないと、日本企業の状況が大きく変わることはありません。

(後編へ続く)

サビーネ・フリューシュトゥック(Sabine Frühstück)
カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授
専門は現代日本文化論。日本の自衛隊に短期入隊し、多くの自衛隊員にインタビューするなど、日本人男性観の研究にも注力している。著書に『不安な兵士たち』(原書房)、『日本人の「男らしさ」』(明石書店)、『Gender and Sexuality in Modern Japan(New Approaches to Asian History)』(仮題『現代日本のジェンダーとセクシュアリティー(アジア史への新アプローチ)』未邦訳)などがある。
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