2021年にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2021年8月10日)
「万引きGメン」はどうやって犯人を見つけているのか。これまで5000人以上を捕まえたという伊東ゆうさんは、駅近の地下食品街にいた中年女性のある行動を見て、「これは常習だろう」と目を付けた。『万引き』(青弓社)より一部を紹介する――。
スーパーでお買い物
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

昨今のスーパー店内は不審者だらけ

レジ袋有料化に伴うエコバッグ利用者の増加と新型コロナウイルス流行によるマスクや帽子の着用率上昇に伴い、昨今の食品スーパー店内は一見して不審者だらけといった様相を見せている。普段はあまり見かけないタイプの人たちも食料品の買い出しにくるし、大量の商品を買い込んでいく人が多いことから、不審者の見極めに手間取るようになった。

商店側も危機感をもっているようで、ここのところ新規依頼が急増していて、すべての依頼を受けきれない状況だ。ここでは、コロナ不況の犠牲者ともいえるカフェ店主について話そう。

当日の現場は、東京郊外の複合商業施設にある地下食品街Mだった。精肉や鮮魚をはじめ、青果、総菜、弁当、パン、菓子、輸入食品などの多種多様な専門店が軒を連ねる、デパ地下に似た雰囲気の商店だ。今回は、万引き被害に悩むテナントからの苦情を受けた協同組合から、およそ2カ月にわたる食品街全体の集中取り締まりの依頼を受けた。

この日は、その5日目だった。各店の売り場面積は小さく、棚も低いために、一見すると万引きしにくい状況に見えるが、相当数の常習者を抱えているようで、すでに何人かが摘発されていた。通常のスーパーと比べて高級な商品を取り扱っているため、万引き犯にも好まれてしまうのだろう。どうせ盗むなら少しでもいいモノを。そう考える万引き犯は非常に多いのだ。