例えば、いつも行く店の店員に「いつもありがとうございます」「いつもおしゃれですね」などと言うのはアリなのか。電通のコピーライター・勝浦雅彦さんは「そんなことを言ったら、相手にあやしまれると考える人もいます。でも、他者とつながるために大切なのは“相手の反応を期待しないこと”。誰かに話しかけたり、コンタクトを取ることは、やらなきゃ確実にゼロなことを、勇気を持ってイチを生み出そうとしている行為なのです」という――。
※本稿は、勝浦雅彦『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)の一部を再編集したものです。
「はじめに言葉ありき」の勘違い
「はじめに言葉ありき」
よく目にする聖書の言葉ですよね。世の森羅万象はすべて言葉によって規定できる、と。これ、言葉関係の本ではよく出てくる話です。でも、これはどうやら誤訳のようです。聖書に書かれたギリシャ語を直訳すると、「すべての始原、根源的真理・原理はキリストの言葉である」となるそうです。日本では宗教性を無視した拡大解釈が広まっているわけですが、みんなこの言葉が好きですよね。
なぜだと思いますか?
それは「言葉ですべてが理解できると安心するから」ではないでしょうか。何度も繰り返しますが、人間とはそもそも相互不理解が前提にある生き物であり、だからこそ数多の「言葉によって他人を理解し、コミュニケーションをするための本」が溢れているのです。
本書もその一つですが、簡単なテクニックでそれを叶えるものではありません。そんな技術は欺瞞です。何より大切なのは自分を知ること、つながりたいと思うこと、そしてそのためにあなたが一歩を踏み出し、変わることです。
ここでは、他者とつながるための言葉の基本動作を学んでいきます。普段、何気なく使っている言葉や、曖昧なまま使い続けている言葉の意味を掘り下げていき、言葉の足腰を確かなものにしていくことが狙いです。