内定への最終関門である役員面接では、意図的に意地悪な質問を浴びせられることもある。どう返すのがいいのか。言葉のプロである、電通コピーライターの勝浦雅彦さんが転職時に「悔いなく言いたいことすべてを話し終えることができた実感がある」という渾身のセリフとは――。

※本稿は、勝浦雅彦『つながるための言葉 「伝わらない」は当たり前』(光文社)の一部を再編集したものです。

面接官たちの顔が逆光で見えない
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転職はマッチング「学歴優遇で選ばれる可能性は低下」

忘れるところでした。まかり間違ってこの章のタイトル(当初は「就活のための言葉」だった)だけを読んだ社会人に「え? 就活? これ大学生向けの本? 読みたくないや」と本を棚に戻すような拙速な行動をされないために、あとから「転職」の二文字を追加したのでした(かなり正直に書いています)。

これは、人生において3度転職した私の経験則ですが、転職は、就活よりも間口の狭いマッチングの場です。間口が狭い、とは選考にあたってかなり具体的な能力・スキルの突き合わせが行われるので、就活のように学歴優遇や勢いや雰囲気で選ばれる可能性は低下します。その分、中途採用を行う会社の求める人材像が明確なので、自分が当てはまらなければエントリー権すらありません。諦めもつきやすい。かなりイーブンな世界だといっていいでしょう。

時々、逆転劇も起こります。例えば、インターネット革命が起こる前、私の会社の新卒採用を受けたITに精通したある方は、面接官に「こんな箱(PC)で稼げるわけがないでしょ?」と言われたそうです。産業の黎明期にはありがちなことですが、その人は、IT系の会社に進み、やがてITブームの到来によって必要とされる価値あるスキルを得て、逆に弊社に請われ転職してきました。世の中の潮目はしょっちゅう変わるのです。

このように、学生時の就活で希望が叶わなくとも、自分という人材の価値がいつ最大化されるのか? それを設計しつつ時を待つ、というやり方があります。

大事なのは、就活の時に掘り起こした「自分がやっていて楽しいこと、少なくとも魅力を感じること」を仕事にすることです。その上で目指す組織がその延長線上にあるなら、機を窺ってスキルを伸ばしていくのがいいでしょう。やがてその業界で一目置かれる存在になった時、あなたが目指す会社にチャレンジするのも良し、そこまでの存在になったら独立してしまった方が何倍も報酬を得られることもあります。決して人生を点のみで捉えないでくださいね。