ドラマの先を描く作品も
「17才の帝国」が描いた202X年のその先は? ふと思い出した作品が2つあるのだが、ちょっとレアなスペシャルドラマだった。どちらも各オンデマンドで見られるので、機会があればぜひ。
ひとつは「2030かなたの家族」(NHKオンデマンド)。家族という概念が薄まり、単独で生活する人が増えた2030年。家族よりも、趣味や同世代に特化したコミュニティが発達し、ストレスのない共同生活を送っている。都心には最先端技術を駆使した高齢者向けの街がある。富裕層は悠々自適に、貧しい者は身体能力を補う機械を身に着けて働き続ける。「家族」や「絆」の呪縛から解き放たれた世界を描いたSF作品だった。「17才の帝国」は政治に関わる限られた人々の物語だったが、こっちは生活に地続きの話になっている。
もうひとつは「シンギュラリTV2043」(BSフジオンデマンド)。2043年、AIが人類の知能を超え、アンドロイドと人間が共生する世界の問題点をモキュメンタリー風に描いた作品。アンドロイドの基本的人権が認められる世界となると、さすがに遠い未来だなぁと思うのだが、設定が実に面白い。アンドロイドと人間の間に生じる法律や差別意識の壁、単純ではない近未来の問題点に思わずうなる。
陳腐な恋愛モノや時代遅れのスポ根よりも、想像力をかきたてるSFドラマのほうが断然面白かった今期。空想科学の世界にどこまでリアリティと説得力をもたせることができるか。そこに、何千年たっても変わらない人間特有の欲や業をどれだけ絡められるか。今後、各局がドラマでAIをどう調理するか、チェックしていこう。