AIの結論「経験は人を臆病にしたり、腐らせたりする」

設定はさておき、もう少し物語を。主人公は17歳の総理大臣・真木だが、物語の展開を担うのは同じ高校生の茶川サチ(山田杏奈)だ。彼女は政治に関心の高い、普通の女子高生だったが、真木に指名されて総理補佐官となる。

実はサチの家族はそこそこ問題を抱えている。父(杉本哲太)はリストラされて失業中、教員の母(西田尚美)が生計を担っているが、弟(加藤憲史郎)はいじめを機に引きこもり、祖父(綾田俊樹)は車椅子生活で介助が必要な高齢者だ。

サチは将来への不安と、政治に無関心な大人たちへの不満を抱いている。真木自身も貧しい母子家庭に育った。母亡き後は祖母に育てられ、幼くして介護に追われるヤングケアラーだった。政治への関心の根源には「高校生が絶望するような国でいいのか?」という思いがあるのだ。

世間は「知識も経験もない若者に行政ができるか?」と懐疑的だったが、そこには明快な回答が用意されていた。それは真木の言葉に込められていた。

「知識はソロンに蓄積されている。経験は人を臆病にしたり、腐らせたりする」

もうあと5話あってもよかった

物語が進むにつれ、真木がサチを指名した理由、なぜか鷲田総理大臣の孫が閣僚に選ばれた理由、開発責任者でもある平がソロンに選ばれなかった理由が明らかになっていく。臆病になった人や腐った人が引き起こしたある事件がすべての根底にあるとわかる。

最終的には、サチの暴走が原因で真木は総理大臣を罷免されるのだが、非常に明るい結末で終わる。若き閣僚たちは市民オブザーバーを閣議に加えて、より風通しのいい政治を担っていく。5話でハッピーエンドというわけだ。

あともう5話あれば、ソロン自体の欠点やシンギュラリティ問題(AIが人類の知能を超える)、財政難や災害による弊害、年寄りの逆襲や若者の暴走など描けたかもしれない。壮大な日没物語となって海外に輸出できたかもしれない。でもそこまでいくと、SFというよりはホラーかパニックになってしまうか……。