NHKのドラマ『17才の帝国』が、ドラマ好きの間で話題を集めている。ライターの吉田潮さんは「今期の連ドラの中で最も新奇性に富む意欲作であり、全5回という短さがつくづくもったいないと思わせた秀作だった」という――。

今期連ドラの中で最もよかった「17才の帝国」

――202X年、日本のGDPは戦後最大に落ち込み、G7からも“除外”、失業率は10%を超えた。人々はこう呼んだ。経済の日没。“サンセット・ジャパン”――。

強烈だが「さもありなん」と思わせる近未来の物語。それが「17才の帝国」(NHK)だった。今期の連ドラの中で最も新奇性に富む意欲作であり、全5回という短さがつくづくもったいないと思わせた秀作でもある。

AIと若者に行政を任せてみる

さて、どんな設定だったかというと――。

人口の40%以上が65歳以上の超高齢社会となった日本、政府も地方自治体も年寄りばかり。「政治にもっと若い力を」という建前のもと、政治AI・ソロンを導入した実験都市行政計画「プロジェクト・ウーア」を発表する鷲田総理大臣(演じるのは、うっすら意図するものがあると思わせるチョビヒゲの柄本明)。

かつては大企業が雇用と発展をもたらし潤っていたが、撤退と共に衰退した典型的な地方都市の青波市を「実験都市ウーア」とし、AIと若者に行政を任せるという。このプロジェクトの責任者は、鷲田の右腕でAIによる政治改革を推進してきた内閣官房副長官の平清志(演じるのは目の据わった星野源)。若い力と言いながらも、老獪な政治家の思惑は別にあり、という設定ね。

ソロンとともに行政を担う閣僚は、主に20代の若者。15歳~39歳の応募者10万人から、ソロンが選んだ人材だ。弁理士の資格をもつ22歳の林完(望月歩)、アメリカの大学で経済学を専攻した22歳のマルチリンガル・雑賀すぐり(河合優実)、総理の孫で旧・青波市出身の25歳・鷲田照(染谷将太)。そして、ウーアの総理大臣に選ばれたのは、なんと17歳の高校生・真木亜蘭(神尾楓珠)だった。

「癒着やしがらみを排した透明な政治、人々の声を聞き、謙虚に受けとめる政治、助けを求める人に手を差しのべて救う政治」を約束する17歳の総理大臣は、高支持率でスタートを切る。斬新な行政改革の第1弾は、市議会の廃止と市職員の削減。元・青波市の市議会議員たちや、安定した職を急に奪われる市の職員たちは激怒。前途多難、不穏な始まりである。