初期と今との違いは「双方向コミュニケーション」

初期のアイドル産業(第1、2世代アイドル)は、プロダクションやその代表による主導のもと、代表がやりたい音楽を作り、制作陣好みの、もしくは彼らが手がけてみたい方向性を持つグループを企画していました。

また、アイドルグループの中に戦略的にメンバーごとのキャラクターを与え、世間にお披露目しました。つまり、「うちのやり方でコンセプトを組んで、レベルの高い音楽とコンテンツ、優れた実力と魅力を持ったアーティストまで準備したよ、どうかな?」という、やや一方通行のやり方でした。

今は、伝えようとするメッセージと音楽によって人々と心を通わせ、コミュニケーションを取ることが重要になりました。技術の発達によって、一般大衆がアイドルとコンテンツ、コンセプトについての意見を直接伝え、働きかけるチャンスが多くなったのです。

プロダクションやアーティストの側でもフィードバックを即時に受け取ることのできるチャネルが増え、双方向のコミュニケーションが可能になりました。

これからも、アーティストと大衆とのコミュニケーション、さらに言うと「共感」の重要性がいっそう認められるでしょう。

「高め合える友人のような存在」BTSが選ばれるワケ

以前は、一般人がアーティストに直接会えるチャンスがほとんどなかったため、アーティストはまるで空の星のように存在していて、それこそ「スター」でした。

今はそうではありません。アーティストたちは、今や我々とさほど変わらない人間的な顔があり、ステージを降りると同じように悩み、壁を乗り越えて成長し、お互いにポジティブな影響を与えることのできる身近な存在になりました。アーティストと大衆が、互いに高め合える友人のような関係になったとき、アーティストはいっそう愛される存在になります。

コロナ禍が続くなか、「Dynamite」と「Life Goes On」、『Butter』、「Permission to Dance」でビルボードチャート1位はもちろん、2年連続でグラミー賞にノミネートされたBTSを事例に考えてみましょう。

2016年から2020年までの5年間の年間アルバム販売量ランキング(ガオンチャート)でもBTSが圧倒的1位です。

2013年6月、アルバム『2 COOL 4 SKOOL』でデビューしたBTSは、プロデュースもできるラッパーのRM、SUGA、J-HOPEを筆頭に、ボーカルのJIN、JIMIN、V、JUNG KOOKの7人で構成された男性アイドルグループ。彼らは、Big Hitエンターテインメントが初めて打ち出したヒップホップコンセプトの男性アイドルグループで、10~20代が共感できるメッセージをこめた連作アルバムシリーズや積極的なSNSマーケティングによって、国内だけでなく海外でも認められるK-POPアーティストへと成長しました。

デビュー当初と比べると、アルバム販売量は著しく増加しており、コンサートの規模は、2014年に比べ5年で90倍となる9万席(ウェンブリー・スタジアム公演時)です。2020年年間アルバム販売量の1位と2位もいずれもBTSでした。