東京都の太陽光発電義務化が引き起こしたヘイトの嵐
東京都は住宅・建築物での消費エネルギーや温室効果ガスの割合が大きいことから、その削減に向けてさまざまな施策を進めています。先日、専門家からなる審議会の提言を受けて、一戸建て住宅を含む新築建物に太陽光発電の設置を義務付ける条例改正の中間とりまとめについて、パブリックコメントが開始されました。
太陽光発電については、従来、京都府で「説明義務化」が始まるなど、普及に向けた自治体の取り組みはこれまでもありましたが、設置の義務化は東京都が初めてことで、大きな注目を集めています。そうした中、非常に強烈な「ヘイト」といってよい批判の嵐がネットを中心に蔓延。「論破」で有名なYouTuberまで参戦して、大変にぎやかなことになっています。
筆者は、大学の博士課程を卒業後、国の研究所を経て大学で教員をしています。25年以上にわたって住宅のエネルギー全般を、世間の注目を集めることもなく地味に研究しています。太陽光発電が売れたからといって、特段ご利益にあずかれる立場ではありません。しかし、そうした利害関係がない立場からみても、今の太陽光ヘイトは異様なものに感じられます。
太陽光を批判する人は本当に環境や人権を考えているのか
太陽光ヘイトの理由として定番なのは、「家が高くなる~」「屋根に載せると雨が漏る~」「パネルは輸入品ばっかり~」「生産国での少数民族の人権が~」「パネルの廃棄が~」など。あらを探し出してひたすら攻撃する。「ほじくったあらをシツコク一点攻撃」という、論破そのものを目的とした、平凡でありふれたスタイルです。
太陽光アンチの「論拠」の一つひとつに反論することに、限られた文字数を割く余裕はありません。太陽光の課題を論じる時だけ豹変する「トキダケ環境主義者」「トキダケ人権主義者」が、本当に環境や人権を真面目に考えているとは思えませんからね。
発信する方は「常識のウソ見つけた俺スゴ」で気分よく、動画サイトのエンタメとして手軽にバズればコスパも良好。今回の義務化案を潰した暁には、「俺たちスゲ~」「コイケ(都知事)蹴飛ばしたった~」とひとしきり内輪で盛り上がった後は、次の論破ターゲットを探しに徘徊していくのでしょう。