「電気代は何とかなる」なんてゼッタイ言えない
本稿ではもはや、深刻化する地球環境問題とか化石燃料輸入に伴う巨大な貿易赤字とかは論じません。こういうテーマを持ち出すと「イマドキ地球温暖化なんか信じてる~」とか「原発再稼働でオールOK~」とかなりかねませんから。
本稿ではひたすら、日々の暮らしでの電気代にフォーカスします。なにしろ、昨今の国際情勢の影響をもろにうけて、この1年ちょっとの間に電気代は実に4割も上昇していますからね(図表1)。電気を同じ量使っているだけで、毎月の支払いが3000円以上も値上がりとか、正直イタイ。地球環境とか日本の経済はさておいて、「今後も電気代は値上がりしますか? どうすれば負担を避けられますか?」という問いに絞って考えていくことにします。
住宅エネルギーの専門家の端くれとしての立場からすると、この質問は素朴だけと結構シビアでキツイです。本当は筆者も、「電気代なんて心配ないですよ~、なんとかなりますよ~」と笑顔で答えてあげたい。でも多少は事情を知っている立場からすると、そんな楽観論は(口が裂けても)言えません。そして、真面目に電気代の値上がりを心配するなら、一番効果があるのはスバリ「太陽光の屋根載せ」です。
エネルギー争奪戦で化石燃料の価格高騰は避けられない
まずは電気代の予想から始めましょう。株価と同じように、電気代を予想することは極めて困難ですが、まずは電気を作るのに欠かせない化石燃料の価格を見てみましょう。図表2に、熱量あたりの化石燃料価格(米ドル)の推移を示しました。
ロシアのウクライナ侵攻に伴い、ヨーロッパの天然ガス価格は跳ね上がりました。2020年ごろはコロナ禍による需要停滞で価格が暴落していた分、今回の値上がりの痛みは厳しくなっています。さっきの電気代4割アップはこれが直接の原因。化石燃料の値上がりは、「燃料費調整」という制度で自動的に電気代にスライドされるのです。
今回の非常事態が収束すれば、化石燃料の価格はまた落ち着くのでしょうか。そうなることを切に願いますが、今、ヨーロッパはロシアへのエネルギー依存を解消すべく、世界中から代わりとなる供給国を血眼で探し求めています。
世界を巻き込んだ奪い合いになれば、価格高騰は避けられません。おまけに、円の価値が下がる円安が進行すれば、ほとんど100%輸入の化石燃料の円価格はさらに高騰。いずれにしろ、化石燃料の大きな値下がりは望み薄にも思えます。