「お客様目線の販売」の実例
例えば高級車販売をする会社で、「客単価の目標を達成するために、乗り換え時には1ランク上位のモデルか、同等のモデルから提案を始める」というマニュアルがあったとしましょう。
売上を上げることは会社には大事なことですが、お客さまにとっては必ずしもそうではありません。このお客さまには必要なさそうだ、と感じた場合にはマニュアルどおりに進めるのではなく、あえてこんな聞き方もできるでしょう。
〈車販売のセールストーク例〉
○○さま(お客さまの名前)、以前乗っていただいていた△△クラスですが、メインでは奥さまがお乗りになることが多かったと伺いました。△△クラスは、確かに高級感を感じながら運転いただけるメリットはありますが、正直、○○さまから伺った用途や、車庫入れや縦列駐車時、普段の運転のしやすさを考慮すると、□□クラスに、AとB、もし後部座席にお子さまが乗られるようでしたら、Cのオプションを付けられる乗り方も、実は実用的かと存じますが、いかがでしょうか?
このような提案をしたら、どうでしょうか。
実はこのエピソードは実際にあった話で、私が大変お世話になったD社長の奥さまから伺ったものです。
D社長はこの接客で購入を即決されたと言います。D社長の性格を考えると、乗り換え時もこの担当の方にお願いするのはもちろん、「このような対応をしてもらえた」というエピソードを友人に話して、そこからの紹介、さらにはお子さんの車までもこの営業の方が担当されることになるのではないかと思います(現にこうやって、私のところまでエピソードが伝えられていますよね)。
短期的にはダウングレードで、単価も低い車を提案した。でも、お客さまが喜ばれて、追加の発注や紹介が生まれ、トータルの売上は上がるのです。
「本当にお客さまにとってのベストを考えた」真心が感動を生み、結果、成約につながるという好例です。こうした能力を備えた営業パーソンは将来にわたっても活躍し続けることができると、私は信じています。