「浮気男検知レーダー」が発達したワケ

この父親の責務は、女性や子どもにとって重大だ。スーパーベイビーを生み出す遺伝子をもっていても、大事なときにいつも逃げ出す男性は、母親や子どもにとって災厄だ。

狩猟採集社会の人類学的な研究から、もし男性が女性を捨てたり、狩りのアクシデントで死んでしまったりすれば、子どもが生き延びる確率は格段に下がることがわかっている。

責務の放棄は、どのようなかたちであれ、膨大な犠牲を生じさせる。だからそれに対する進化的な防衛策として、高性能の「浮気男検知レーダー」や、誠実でやさしく守ってくれる男性に惹かれる回路が発達した。

理論的にいえば、男性はこれら3つ──優秀な遺伝子、パートナーシップ、父性──のすべてを兼ね備えている。しかしその比率は、女性のパートナー探しのゴールに応じて変わるだろう。

ヒトの求愛活動は複雑で時間がかかる

多くの種で、メスが注目するのはひとつだけ──セックスアピールだ。クジャクの羽やカエルの鳴き声といったセックスアピールは、オスがもつ遺伝子型と表現型を表わしている。

これはヒトの女性でも同じだと主張する者もいる。彼女たちが本当に重視するのはたったひとつの重要な特性──富や地位、男性的エネルギー、感情的知性など──だけだというのだ。

だが、ヒトの恋愛関係はもっと複雑だ。多くの特性、シグナル、証拠がパートナー選びのための情報を伝えるのに必要不可欠だが、それぞれ単体では、社会的な成功や生殖の成功を得るには不十分だ。いくつかは「選択肢」にさえなりえない。

女性が男性に惹かれるのは、男性が女性に示すひとそろいの特性への、感情的な無意識の反応だ。じっくり考えて行なうような意識的なものではない。

だからこそ、ヒトの求愛活動は複雑で時間がかかり、男性にとっても女性にとってもストレスのたまるものなのだ。