母親の死を待つだけではなく自分でも稼ぐことを目指す

「みどりさんは一人っ子だから、お母さまの財産をひとりで相続できるのは事実ですが、みどりさんには、お母さまの介護をする意思はないですよね。もし、お母さまに介護が必要になって、高齢者施設に住み替えるとしたら、今ある預金の多くは、介護費用で消費されてしまう可能性もあります。お母さまは預金で入居一時金を払えるでしょうし、年金と家賃収入で月々の費用をまかなえるはずだから、それなりの費用がかかる施設に入居される可能性もありますよね。今の時点でお母さまがお持ちの預金が、そのまま相続できるとは限らないことも知っておいたほうがよいと思うんですが……」

「たしかに、私は母親の介護をするつもりはまったくありませんし、母親も今さら、私に介護をしてほしいとは思ってない気がします。となると、介護が必要にならずに、母親に死んでもらうしか、私が働かずに暮らしていく方法はなさそうですね」

少しだけ開いたカーテンから光が差し込む暗い寝室
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです

「失礼ですが、さきほどからお母さまが亡くなることを願うような発言をされていますが、それよりもまず1000万円がどうなるのかを自分の力で調べることが大切だと思います。△△さんに聞いただけでは、調べたことになりませんから、できる限りの関係先に電話をしてみてください。

調べた結果、投資したお金が戻ってこないと判明したら、みどりさんも少しは働きませんか? お母さまが亡くなることを願う人生って、私なら悲しいですし、40代から部屋に閉じこもったままでいると、50代、60代とこの先、身体も動きにくくなっていくと思います。たくさん稼ごうと思わなくてもいいと思うんです。せめて自分の食費くらいはアルバイト代で稼ぐことを目指せませんか?」

「そうですよね。働けない状態がかれこれ3年くらい続いていて、最近は外に出るのさえ、おっくうになっています。今は、△△さんとときどき会話するのが、唯一の楽しみですが、△△さんとの会話にもお金がかかる現実を考えたら、少しでも自分で収入を得るべきですね」

このあともやるべきことを確認していったが、私のアドバイス通りに動いてくれるかは疑問が残る。投資先への確認も、私に頼みたそうな雰囲気だったが、私が代わりに引き受けるのはみどりさんのためになるとは思えなかった。

みどりさんは一人っ子なので、親の財産をひとりで相続できる代わりに、相談できる兄弟姉妹はいない。また△△さん以外に、本音を話せる友達もいないとのこと。

母親が亡くなったら実家に戻るのかもしれないが、古くなった家の修理や建て替え、親亡き後のアパートの管理など、子どもとしてやるべきこともある。やるべきことを自分で解決しようとはせず、優しく接してくれる人を頼り続けていけば、家の建て替えなどでも、悪徳業者にだまされないとも限らない。

「今までは親御さんに守られてきたけれど、これからはもう少し、自分の力で物事を解決しようとする力も必要だと思います。そういう意味でも、今回は起こっている現実を直視して、嫌なことから逃げないように頑張ってください。そしてアルバイトも、年単位で続くように努力してみてくださいね」

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