50歳の男性は高卒後、30年以上短期バイトを繰り返し、正社員で働いたことがない。同居する70代の年金受給者の両親に経済的に依存してきたが、最近になって、「親が老いて弱ってきている」ように感じられ、不安になった。「親に頼らず、自分の力で生き延びたい」と願う男性から相談を受けたFPが出した答えとは――。
コーヒーを飲んだ後のカップ
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高卒後30年以上短期バイト、親に経済的に依存する50歳

ひきこもり当事者と名乗る男性(50)から電話がありました。自分の部屋からも自宅からも出ることはできているし、たびたびアルバイトもしていて社会と関われていると思うけれど、「少しひきこもり」の自覚もあるのだそうです。

男性は正社員として働いたことはありません。高校卒業後は、短期アルバイトを繰り返してきました。高卒後の進路は就職と専門学校への進学で迷っているうちに卒業の時期を迎えてしまい、正社員での就職も進学もできませんでした。当初は就職希望だったのですが、先生の就職指導は丁寧だったもののとても厳しく、大人の世界がこんなに厳しいのなら社会に出るのを先送りしてもう少し勉強したほうがいいと考えて専門学校への進学を検討したのです。

ところが、特に勉強したいことはなかったので進学先を決めかね、結果的に進学も果たせませんでした。男性は自分には決断力が足りないと考えています。

この時、両親は「自分の好きな道を選んでいい」と言ってくれました。家庭は男性曰く「フツウ」の経済状態です。会社員の父とずっとパートタイマーで仕事を続けている母の収入に加え、両親が趣味として投資している株式の儲けも少しあります。男性も妹も小学校から高校まで公立だったこと、特に習い事もしていなかったことから、子供たちのためと思って取り分けておいた資金から専門学校2年間の学費くらいは出せるし、自分が働きたいと考えるのならそれでもいいということでした。

理解のある両親のもと、いつかはきちんと就職しようと思いながらもアルバイトを転々とし、気が付いたら高校を卒業して30年が過ぎていました。両親ともすでに現役をリタイアして、年金で暮らしています。

男性は収入を月額で考えることはあっても「年収」としてとらえたことはなく、自分の日常生活をしっかり支えられるだけの収入を得たことはありません。50歳を目前にして経済的に親がかりの生活を何だか後ろめたく感じるようになりました。人生100年時代と言われるのに、まだ70代の両親が年老いて弱ってきているように感じられることもあり、そんな時は不安になります。親に頼らず、自分の力で生きていけるようになりたい、もし親に介護が必要になったら自分が役に立ちたい、不安な将来のことを理解するためにライフプランというものを立ててみたいと考えたようです。

家族の状況は次のとおりです。