2000年11月@大阪、霊安室の男性が息を吹き返した

近年における蘇生例は、2000年11月に大阪の病院の霊安室に入れた男性が、実は生きていた事件がある。

大阪市西成区で65歳の男性が、心停止状態で発見された。救急隊が駆けつけた時には、既に心肺停止状態であった。病院でも心臓マッサージなどが施されたが、瞳孔の拡大などもみられ、医師は死亡診断。しかし、そのおよそ30分後、警察署員が霊安室に入ったところ、男性は息を吹きかえしていたといいう。男性は昏睡状態のまま、その4日後に死亡した。

この事件を受け11月20日付の毎日新聞朝刊では、日本救急医学学会前会長のコメントを掲載。そこでは、「心停止して瞳孔が拡大しても、数分間は蘇生の可能性がある。蘇生措置をしてから多少時間をおいて、心臓が動き出すこともありうる」と述べている。人間の生命は、時に奇跡を起こす。

知床半島沖における観光船海難事故でもみられたように近年、メディアでは「心肺停止状態で発見」「意識不明状態で発見」という表現が増えている。その理由には、AED(自動体外式除細動器)などの普及による蘇生の可能性が増えてきたことや、医師による死亡診断が確実に行われない限りは「ひょっとして」という可能性が排除できないためである。

ところが2018年3月には神戸市で、死後16時間で火葬していたミスが判明した。原因は葬儀社が火葬の予約時、誤って死亡日時を記入したためだった。このようにしてみれば、墓埋法3条の「24時間を経過してからの火葬ルール」も納得するものである。

しかし、ここ2年間にわたるコロナ禍においては、コロナで亡くなった人に対して24時間以内での火葬が認められている。墓埋法では、「他の法令に別段の定があるものを除く」と明記されており、これは主に感染症の蔓延まんえん防止の観点で適用される。

厚生労働省は2020年7月、新型コロナウイルス感染症での死亡時の遺体の扱いや葬儀、火葬に関するガイドラインを発表している。それによると、「24時間以内に火葬することができるが、必須ではない」としている。

平時であれば死亡後、枕経や通夜や葬儀・告別式を実施することが多いため、必然的に火葬までには数日を要する。しかし、とくにコロナ初年の2020年は、コロナ感染者の遺体からも感染する可能性が示唆された影響で死亡後は、すぐ火葬にする「骨葬」にする事例が出てきた。骨葬とは先に荼毘だびにふし、遺骨になった状態で葬式を実施することである。

火葬場
写真=iStock.com/Ritthichai
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また、コロナ禍を背景にして、葬式をしない火葬だけの「直葬」や、一連の儀式を1日で終える「一日葬」が増えている。こうした葬送の簡素化が増えていけば、ペルーの事例のように「万が一の事態」が起こりうることも懸念されるが、火葬炉の扉が閉まってからではどうしようもない。火葬炉の内側からノックの音がすることなど、あまり考えたくないことではあるが……。

 

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