少しむずかしく感じた人もいるかもしれない。でも、改めて伝えたいのは、本当はちっともむずかしくない、ということだ。なぜなら、このプロセスは、あなたも普段から自然にやっていることだからだ。じつは、シンプルな話なのである。そのことをあなたに知ってもらい、安心してもらうために、もう1つだけ例を挙げたい。あと少しだけ、ついてきてほしい。
だれもが普段から自然に「問いを分解」している
この例は、まさに普段から私たちが自然にやっている「問いを分解する技術」そのものだ。心から腹落ちしてもらうために、ぜひイメージしてほしい。
いま、あなたは、40キロ離れた大型のショッピングモールに買いものに行こうとしている。最大で60キロまで出せる道路だが、安全を考慮し、普段は時速40キロで走っている。信号もほとんどないため、1時間で到着できる。往復だと2時間だ。もともとは、スケジュールに余裕があった。しかし、午後から急に天気が荒れるらしいと聞いたあなたは焦る。洗濯物を干していたため、予定を前倒しして、20分早く帰らないといけない。買いものは今日絶対にしたい。
さて、あなたはどのような思考プロセスを経て、結論を出していくだろうか? ほとんどの人は、こう考えるのではないだろうか。時速40キロではなく、車の速度を上げよう。加えて、ショッピングモールでの買いものを急いで済まそうと。
このとき、私たちはじつは、前述のマーケティングの例と、まったく同じ脳の使い方をしている。具体的には、以下のように「問いを分割」しているのだ。
CQ:X時X分までに買いものから帰ってくるには、どうすればいいか?
SQ1:通常の速度(=40キロ)で走ると、何時に到着してしまうのか?
SQ2:差分の時間を埋めるために、できることはなにか?
SQ3:どういう優先順位で、どこから取り組むべきか?
このとき、まさに先ほど話したとおりの構造になっているのが、わかるのではないだろうか? つまり、こうなっている。
CQ:あなたが最終的に解くべき問い(=買いものの完了)
SQ1:あなたの「目標」をより具体化するための問い(=到着予定時刻の予測)
SQ2:あなたの「現状」を踏まえて、やるべきことを明確化するための問い(=早く着くためにできることの明確化)
SQ3:優先順位をつけて、「なにから取り組むべきなのか?」を明確にするための問い(=まず速度をあげよう)
必要なのは特別なスキルではなく小学生レベルの算数
結局のところ、実際のビジネスの世界で使う論理的思考は、それほどむずかしいことではないと、私は思う。あえて言い切るなら、必要なのは、小学生レベルの四則演算を「とてもじょうずに使いこなせる」ことだ。
この本は、ある意味で、私がこれまで積み重ねてきた思考の「じょうずな使い方」を伝えているようなものだ。そして、私が使っているのは、小学生レベルの四則演算でしかない。だからこそ、私がもっている技術を、あなたにもこうやって伝えられるわけである。もし、私がもっている技術が特殊技能であれば、あなたに伝えることはできない。
というのも、ビジネスの世界では、きわめて重要なルールがあるからだ。それは、「どれだけ複雑な計算問題が解けるのか?」よりも、「複雑そうに見える問題を、いかにシンプルな問題に置き換えて、だれでも解ける状態にできるのか?」のほうが、じつは数億倍も価値がある、ということだ。だからこそ、ぜひ使ってほしいのだ。応援している。