ビジネスでの具体的な例を挙げておこう。あなたはいま営業で、見込み客に自社のサービスの説明をすることになった。このとき、あなたがまずやるべきことは、見込み客が「どんな目標をもっているか」と「どんな現状なのか」を把握することだ。つまり、「ペイン」を明らかにすることである。

そのうえで、そのペインを解消するための答えが得られる問いを立てるべきなのだ。別の言い方をすれば、自社のサービスを利用することで、見込み客の目標と現状との差分を、どのように埋められるのかを提案するということだ。

少し混乱するかもしれない。だとしたら、これだけ覚えてほしい。

・相手の「目標」と「現状」との間のギャップ=ペイン
・そのペインを解消するための答えが得られる問い=提案

相手より上の視点を持った問いを設定する

「ペイン」を探す方法はわかった。ここからは、あなたが見つけた「ペイン」を、具体的にどうやって育て、問いをつくるのかを学んでいこう。先で紹介した、

問いの立て方3つのフロー
①ペインを探す
②最大の問いを設定する
③問いを分解する

の②である。この問いが解けたら、「不安がなくなった!」「悩みが解決した!」「満足できる!」というような最終的なゴールを設定する、ということだ。あなたが最終的に解くべき、大きな問いを設定するのだ。このとき役に立つのが【上位一貫性の法則】と呼ばれるものである。定義すると、「相手の1つ上、または2つ上の視点まで一貫して考慮した問いを立てること」となる。

これは具体例があったほうがいいだろう。

以前、100年近く続くある企業と、業務をともにした際の話をしよう。その企業は、既存のやり方にこだわり、直近の業績が悪化していた。私が対峙たいじする担当者は、とてもやる気があり、一緒にデジタル化の推進をしようとしたが、老舗大企業の風土もあり、「新しいことになかなか挑戦できていない」というペインを抱えていた。では、どうすべきか?

答えは、1つ上、または2つ上の視点をもつことだ。具体的には、担当者が所属している「チーム」、その上の「事業部」、さらに上の「会社」のペインまで、一貫して考慮した問いを立てることだ。

施策のインパクトの大きさよりも視点の広さ

上の視点で見ると、担当者の上長のペインは、デジタル化の推進そのものではなく、はじめての取り組みであるデジタル化に伴う失敗リスクだったのだ。これでは、どれだけ担当者がデジタル化の重要性を説いても、うまくいかない。

そこで私は、「他社の事例で、すでにうまくいっている外部パートナーに協力を仰ぐことで、安心感をもってもらう」という提案をした。その結果、上長も納得し、担当者と上長ともに念願だったデジタル化を成し遂げ、担当者は年間の社長賞を受賞した。

まさに、担当者目線で見た施策のインパクトの大きさではなく、1つ上、または2つ上の視点まで一貫して考慮した結果であった。