大前研一●ビジネス・ブレークスルー大学学長。1943年福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院修士課程修了。MIT工科大学大学院博士課程修了。工学博士。最新著『訣別 大前研一の新・国家戦略論』(朝日新聞出版)は「大阪都構想」の理論書でもある。

大前 中央集権的な統治機構を組み替えなければ、今の日本はにっちもさっちもいかなくなっているのは間違いない。教育の面でも橋下市長は「バカな文科省の言うことは聞かなくていい」とおっしゃってきたけど、全国一律の指導要領なんて今どき本当にバカげた話です。大阪都が欲しいと思う人材を育てるカリキュラムは、大阪都が決めるべきなんです。

橋下 2010年12月、文科大臣(前大臣の中川正春氏)のところに大阪新市長就任の挨拶に伺ったときにも、その話をさせていただいたんです。

大阪で僕がつくろうとしている条例(教育基本条例案)について、「違法性がある」という政府答弁書が先日閣議決定されてしまいました。最大の問題は「知事が教育目標を定めるのは権限外だから」というのです。冗談じゃない。知事や市町村長は選挙に出るときに、「教育をああする」「こうする」と言って出てくるわけです。権限がないのに選挙で公約を掲げるのであれば、できないことを言っている念仏みたいなものじゃないですか。それを文科大臣に言ったら、大臣は「条例でつくることが違法であって、しゃべるのはいい」と。

大前 それじゃ何も実行できない。