「他国の言葉にすべて従う国は滅びる」

すべてが明らかになった今では、「現在の知識を25年前のウクライナ人が知ってさえいれば……」と嘆くしかない。いまウクライナが置かれた状況は、世界にとって大きな教訓となっている。

1つ目は、一時的におとなしくなった侵略国家が、再び凶暴になる可能性は十分あるので警戒しなければならない、ということだ。

2つ目は、国際社会においては、どの国も過去に自国が取った行動には責任を持ちたがらず、責任を放棄しようと考える、ということだ。これは世界各国に共通する願望である。

3つ目は、したがって自国の安全を保障するための交渉において、少なくとも当該国すべてが守る義務のある条約の締結を要求しなければならない、ということだ。またその条約の文面に、自国を守る義務を明確に書かせる必要がある。それでも完全な保障にはならないが、ただの「覚書」よりよほど実体がある。

そして4つ目は、友好国は必ずしも自国のために動くとは限らない、ということである。

グレンコ・アンドリー『プーチン幻想』(PHP新書)
グレンコ・アンドリー『プーチン幻想』(PHP新書)

敵国は自国にとって危険であり、信頼できない存在である、というのは明確だ(それでも明らかな敵国を、敵国として認識していない人々が多いのだが)。しかし、友好国の場合は勘違いをしやすい。

信頼する友好国といえども間違った行動や、自国の利益を損なう行動を取ることもある。だから友好国とはいえ、提言をすべて受け入れる必要はない。友好国からの助言をつねに疑い、時に拒否する理性と根性を持たなければならない。たとえ同盟関係にあっても、他国の言葉にすべて従う国は滅びるのである。

筆者は自国の経験を述べたが、その教訓はウクライナに限らず、日本を含めて多くの国の参考になるのではないか、と思っている。

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