なぜロシアは欧米の反対を押し切って、ウクライナに侵攻したのか。ウクライナ人政治学者のグレンコ・アンドリー氏は「それは中国という後ろ盾があったからだ。ロシアにとって中国共産党は、価値観を共有できる仲間であり、日米がどんなにがんばっても引き離せない。日本は両国とどう接するべきかを、しっかり考える必要がある」という――。

※本稿は、グレンコ・アンドリー『プーチン幻想』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

2022年2月4日、北京で、記念撮影に応じる中国の習近平国家主席(右)とロシアのプーチン大統領
写真=AFP/時事通信フォト
2022年2月4日、北京で、記念撮影に応じる中国の習近平国家主席(右)とロシアのプーチン大統領

多くの日本人が中ロの関係を理解していなかった

プーチンのロシアは中国と親密な関係を持っている。

それにもかかわらず、日本においては、ロシアを対中国包囲網に引き込むことができると考えている人が多い(さすがに今は変わったかもしれないが)。

彼らはおおよそ、以下のように主張している。

1、「ロシアはたしかに今のところ中国と密接な関係にあるが、プーチンは仕方なく中国に友好的な振る舞いをせざるをえないのであって、中国依存から脱却する方法を探している。だから日本がいい話を持ち掛ければ、それに乗る可能性がある」

2、「日本一国だけでロシアを引き込むのは無理であっても、日米ならできるはずだ。米中新冷戦のなかでトランプはロシアと友好的な関係を築き、日米側に引き込むのが狙いだ。だからアメリカの大統領と日本の首相が共に協力すれば、プーチンを説得できる」

さらに、先述の二つとは多少違う話もある。すなわち、

3、「プーチンを日本の味方にすることは無理だろう。しかし、敵に回さないことぐらいはできる。ロシアと平和条約を結んで経済的に援助すれば、ロシアは中国の対日侵略には付き合わないはずだ。日本がつねにロシアを経済的に援助すれば、ロシアは金の卵を産む鶏を自分の手で殺さないだろう。日本を助けることもないが、中国と共同で日本を侵略するようなこともしない、という可能性はある。中ロを共に同時に相手にするよりは、中国のみと対立したほうがマシだ」

たしかに3つ目の話は、最初の2つと比べたら理屈としてはまだマシである。だが、この考えを持っている人も中ロ関係の本質を理解していない。本稿においては、なぜプーチンのロシアは中国と距離を置き、欧米陣営に「鞍替え」することができないのか、解説したい。