「思考力」は知識の上に成り立つものだ

思考力を身につけることが重要であることは、みんな分かっている。だが、思考力とはそもそも何を指すのか、どうやって伸ばしていくものなのか分かっていない人は少なくない。私は、思考力とは知識の上に成り立つものだと考える。知識があってこそ、考えることができるということだ。

今の中学受験では、多くの子供が膨大な知識を覚えるだけの勉強に陥っている。たくさん覚えることがあるから、とにかく覚える。塾の先生が「この問題のときはこの公式を使うんだぞ」と言ったから覚えるといったように、ただ覚えようとする。しかし、先にも述べた通り、近年の中学入試では知識そのものを聞かれることはなく、今ある知識を使って考えさせる問題に変わってきている。そうなったときに、丸暗記や大量演習は通用しない。そこで知識の習得の仕方を変えていく必要がある。

ジグソーパズルの最後のピース
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「なぜそうなのか?」がわからないと知識を使えない

昔から理科や社会は暗記科目と言われているが、ただ固有名詞を覚えるような学習は意味がない。確かにそういう知識も必要だが、理科であれば「こういう現象があるからこうなった」といった因果関係、「こういう特徴があるからこのグループに属する」といった違いに気づく視点、社会なら「こういうことが起きたからこうなった」といったつながりや時代の流れをおさえながら覚えることが重要になる。そういう学習の仕方をしておけば、たとえ初見の問題が出たとしても、「これはあの考え方と同じなんじゃないだろうか」といったように、自分の持っている知識と照らし合わせながら考えることができる。

算数においても、「こういう問題は線分図を書いたら解けそうだ。いや、ダイヤグラムの方がいいかもしれない」と気づけるかどうかが重要になる。一つひとつの解法は知識で、何を手がかりにどの方法で解けば良いかを判断するのが思考スキルだ。公式を丸暗記する学習では、それができない。塾のテキストと同じ問題が出れば解けるが、少しでも変化球が来たら、たちまち解けなくなってしまうようでは意味がない。「なぜその公式を使って解くのか」理解できていない証拠だ。知識を覚えるときには「なぜそうなのか?」理由とともに納得して理解することが大切だ。それを疎かにして、ただ頭に詰め込んでも、応用は利かない。