中学受験生は忙しい。塾の夏期講習はすべて受けるべきなのか。プロ家庭教師集団名門指導会の西村則康さんは「必ずしもすべて受ける必要はない。学年や塾の方針、子供の理解度によって選択することが大切だ」という――。
カットされたスイカとうちわ
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4、5年生は塾の講習タイプによって取捨選択をする

夏休みは受験勉強に集中できる絶好の機会。各塾でも夏期講習が実施され、受験生としての自覚が芽生える時期でもある。だが、この講習、絶対に出席しなければいけないと思い込んでいないだろうか。結論を先に言うと、夏期講習はすべて受ける必要はない。では、どういうときに「受けない」選択をすべきか。

まず、4、5年生の場合、塾の講習のタイプによって選択肢が変わってくる。首都圏の大手進学塾では次のようになっている。

サピックス=予習型
四谷大塚・早稲田アカデミー=復習と予習の折衷型
日能研=復習型

サピックスは完全予習型の講習だ。夏期講習で学習した内容は2学期で触れることなく先に進むため、「受けない」という選択はまずない。ただ、通常の授業では1週間に1単元学習するのに対し、夏期講習では3単元分を学習するため、非常にハードになる。さらに宿題も多く出されるので、講習と宿題で追われてしまいがちだ。そのため授業を振り返る時間を確保できないまま、こなすだけの勉強に陥りやすい。夏期講習を意味のあるものにするには、振り返りの時間を設定しておく必要がある。

夏休み前に「1日の過ごし方」を決めておく

四谷大塚と早稲田アカデミーは、1学期の復習と2学期の予習の両方がカリキュラムに組み込まれている。昨年までは、復習に比重を置きつつ予習単元も入っている状態だったが、今年からは予習が中心となる。しかも、夏期講習で予習した範囲は、2学期に振り返るカリキュラムになっていないことに注意が必要だ。予習単元で力を入れておきたいのは、4年生なら「少数・分数」、5年生なら「比」だ。この単元の習熟度が2学期の学習に大きく影響する。しかも、受験算数で最も重要な単元だからだ。

日能研は1学期に習った単元の復習を行う。一通りの単元を振り返られる点は丁寧とも言えるが、すでに理解できている子には必要ない。苦手な単元は受講し、得意な単元は「受けない」という選択ができる唯一の塾だ。だが、塾側はもちろん「受けなくてもいいですよ」とは言ってくれない。黙っていれば、このまま受講料は引き落とされてしまうだろう。「受ける」「受けない」の判断は、まさに今、しなければならない。

いずれにしても、夏休みを迎える前に、1日をどのように過ごすかきちんと予定を立てておくことをすすめる。4、5年生の場合、通常午前中に講習があり、午後からは自由だ。日中はまだ遊んでいてもいい。むしろ、この時期から受験一色にせず、いろいろな体験をさせてほしい。だが、夜は2〜3時間の勉強時間を作っておこう。ここで子供任せにしてしまうと、やりたいものだけやったり、気分任せになってしまったりするので、「この日はこの単元の勉強をする」など具体的に何をやるか決めておくこと。4、5年生の夏のポイントは「正しい取捨選択」と「計画」の2つだ。