6年生の夏期講習は「強い気持ちと集中力」を鍛える場

6年生になると、どの塾でも内容は同じになり、1学期に学んだ知識を使って、入試本番を意識した実践演習を行う。授業の流れとしては、制限時間内に何問かの問題を解かせ、その後に解説をする。出される問題は、どの塾でも難しめだ。例えば開成クラスの子に灘中の問題を解かせたりする。難しい問題を出すことで、受験生の危機感を煽る狙いがある。だが、ほとんどの子は解けず、自信をなくしてしまう。または「後で解説を聞けばいいや」と投げやりになる。

6年生の夏期講習で最も重要なのは、目の前の一問に対して挑戦する気持ちが持てるかどうかだ。たとえ自分の手に負えないような問題であっても、「絶対にこの1問を解いてみせるぞ!」という意気込みで、まずは問題をしっかり読み、今分かっていることは何か、何を問われているのかを判断した上で、手を動かして考えてみる。これをくり返すことで実践力を鍛えていくのだ。

ところが多くの子は、「短い時間で解かなければ!」と慌ててしまい、問題を読み飛ばしたり、計算ミスをしたりしてしまう。中学受験では満点で合格する子はほとんどいない。だが、1点の差で合否が決まる。だからこそ、「この問題だけは絶対に解く!」という強い気持ちと集中力を鍛えることが重要なのだ。そのための訓練の場として、夏期講習がある。それを知らずに、ただ夏の時間を塾で過ごしているだけでは、力はつかない。

算数の教科書の問題を解く児童の手元
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基礎力がまったくない子は「受けない」選択肢もある

だが、まだそれらの問題を解くだけの力が身についていない子も多い。そういう場合、夏期講習に参加しても、さっぱり分からない状況になってしまう。そうならないためには、夏休みが始まる前の今の時期に基礎力をつけておく必要がある。

6年生の夏期講習は基本的には「受けざるを得ない」。だが、基礎がまったくできていない子は、正直なところ講習を受けても意味がない。そういう子は塾から一度離れて、基礎力をつけるための勉強をしたほうが懸命だ。だが、それを誰が教えるかという問題がある。単元の指導であれば個別指導塾でもできるが、そもそも基礎が理解できていないという場合は、中学受験に精通した家庭教師をつけるなどの対策が必要になる。