一方の「NEXO」だが、水素と大気中の酸素で電気を生成し、それでモーターを回して走るもので、排出する物質は水しかないため、極めて環境にやさしいとされる。日本でもすでにトヨタが「MIRAI」というFCEVを販売しており、実車を市中で見かけることもある。しかし、FCEVは燃料となる水素の充填場所が普及していない、という最大の問題を伴う。「NEXO」の価格は776万8300円で、航続距離は水素満タンで最大820キロ走るのに対し、「MIRAI」は最安モデルで710万円、最大で850キロ走る(金額は税込み、補助金など含まず)。

このままでは国内シェアすら奪われる

米国の専門家の論評には、IONIQ 5について「テスラよりも売れそう」と評価するものも出てきた。デュアルモーターAWDのテスラ「モデルY」と、「IONIQ 5 Limited AWD」との比較によると、「モデルYは、フル充電時の航続距離と性能の両方の概念を極限まで高めている一方、IONIQ 5 Limitedは、モデルYよりも大幅に低い価格帯で、活発なパフォーマンス、巧妙な機能、堅実なビルドクオリティを持つことに感動した」としている。

EUが脱炭素への達成目標を明確に立てて、自動車業界にもその対応を求める中、2022年はコロナ禍からのV字回復の波に乗り、新型EVのワールドプレミアや市場投入が最も多くなると予想されている。自動車業界でも「50種類に及ぶEVがデビューまたは発売される予定で、そのほとんどがSUV」と見込まれている。

ロンドン西郊外のHyundai(ヒョンデ)ディーラーには、納車待ちの「IONIQ-5(左側)」が停まっていた
筆者撮影
ロンドン西郊外のHyundai(ヒョンデ)ディーラーには、納車待ちの「IONIQ 5(左側)」が停まっていた

世界的なEVルネッサンスの時代がやってくるにもかかわらず、日本メーカーは残念ながら市場の流れに取り残されているような気がしてならない。快進撃を続ける韓国メーカーが日本に再上陸すれば、世界どころか国内市場のシェアを大きく侵食してくることすら危ぶまれる。欧州でのEV販売で手応えを得ている韓国メーカーが強気に攻めてくる中、日本の各メーカーはこれにどう立ち向かうのだろうか。

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