「後発EV」でどうやってシェアを広げたのか

後発EVにもかかわらず、韓国メーカーはいかに欧州マーケットに食い込んだのか。まず、Kiaがスロバキアに2004年、続いてヒョンデがチェコに2008年、いずれもかつての東側陣営に製造拠点を建てた。ここを拠点に安価な労働力を使って欧州全体に販売を図った。VWなどの小型車に比べて廉価だったものの、個人購入よりもむしろレンタカーやリース向けといった「フリート販売」で実績を積んでいった。

韓国車の日本における評価は、マーケットから撤退した経緯もあって、残念ながら高いとは言えない。あるいは、日韓間の外交上の懸案などを原因とする交流の冷え込みから、韓国メーカーにとって日本が「売れない市場」になった事情もある。

テスラ車が「路駐」されている風景もロンドンでは日常的に
筆者撮影
テスラ車が「路駐」されている風景もロンドンでは日常的に

しかし、英国で実際にレンタカーとして乗ってみたら、加速性能や乗り心地の点で、日本車と比べ「乗ってて困るほどの違い」は見つからなかった。むしろ、「そこそこの値段で借りられてよく走る」という手ごろな性能の良さに好感が持てたほどだ。

英国もかつては日本のように、EVが持つ航続距離への懸念、充電場所探しの面倒などから、フルプラグインタイプのEVは敬遠気味だった。英国市場におけるEVは、日産の「リーフ」をはじめ、BMWの「i3」、はたまた三菱の「i-MiEV(欧州向けモデルはプジョー iOn、シトロエン・C-ZERO)」などが先行モデルとして販売されていたが、普及が大きく進むまでには至らなかった。

「廉価版EV」が意識高い系の中間層に刺さる

それが、テスラの成功で人々の目は一気にEVへと向かった。英国における2021年の乗用車販売台数統計を見ると、ガソリン、ディーゼル車を含む全体で、テスラの「モデル3」がランキングの2番手にまでのし上がっている。EVに限ったランキングでは圧倒的なトップに輝いた。

ただ、車両価格が最低でも4万2500ポンド(英国での販売価格、約650万円)と高価で、いくら政府が補助金を打っても庶民にはやはり手が出づらい。

そうした市場に、3万ポンド(460万円)前半という廉価なEVを送り込んだのが韓国メーカーだ。EVが欲しいと考える「環境への意識が高い中間層」への訴求効果は抜群だったと言えようか。

「最も売れているEV」であるテスラには及ばないが、昨年の統計を見ても韓国製EVの躍進は目覚ましい。「モデル3」が3万4783台だったのに対し、Kiaの「e-niro」とヒョンデ「Kona」を合わせた数字は1万9470台に達している。

【英国における環境車の販売台数の伸び(2021年の前年比)】英国自動車製造販売協会(SMMT)より
・電気自動車(EV)……76.3%増
・ガソリンハイブリッド車(HEV)……34%増
・プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)…… 70.6%増
・マイルド・ハイブリッド車(mHEV)……ディーゼル車が62%増、ガソリン車が66.2%増