EU加盟国の中で飛び抜けて経済成長しているギリシャ
ギリシャといえば2010年代に欧州を揺るがせた財政危機の印象が強い国だろう。その後も長い間、景気の低迷から抜け出せないでいた。ところが昨年12月、欧州統計局は、2021年第3四半期のギリシャのGDP成長率(前年同期比)がユーロ圏で最大の13.4%だったと発表した。
ユーロ圏の平均成長率は3.9%なので驚異的な数字と言える。ギリシャのスタイクラス財務相は「過去9カ月間の成長率は9.3%に達し、政府が立てた予測値6.9%を大幅に上回った」と述べた。
この大復活は観光政策によるところが大きい。
新型コロナウイルスによるパンデミックが続く中、どのようにギリシャはインバウンド需要を取り戻したのか。
国民への助成金は約1週間で振り込まれた
近年、政権交代が激しかったギリシャでは、現在、中道右派の新民主主義党(ネア・ディモクラティア)が政権政党だ。ミツォタキス首相(2019年7月~)は父が首相、姉が外相経験者という政治家一家出身である。米ハーバード大、スタンフォード大を卒業後、経済アナリストとしてチェース・マンハッタンに勤務した経歴を持つ。
新型コロナウイルスの感染拡大当初から、ギリシャ政府の初動対応は早かった。
2020年1月15日、まだ欧州ではコロナ感染者が発見されていなかったが、アテネ国際空港では到着者の発熱スクリーニング検査を開始していた。
2月下旬以降、イタリアやスペインで感染が急拡大し、すさまじいオーバーシュートを引き起こしていたが、ギリシャは早めの水際対策で、他の欧州の国々に比べ感染拡大は抑えられていた。それでも3月10日に幼稚園から大学に至るまで全ての教育機関が休校、23日から完全なロックダウンとなった。
当時は毎日のように、ミツォタキス首相のテレビ演説や、保健省と市民保護省から、国内の感染状況や有効な制限措置、国民一人ひとりが守らなければならないことについて、真摯な説明が行われた。同時に各方面への経済的支援策も速やかに決定し、各種助成金や、国民への補助金も申請後1週間前後で振り込まれた。